細胞画像の深層学習により高速細胞選抜を実現
2018-09-05 京都大学
山野隆志 生命科学研究科助教、福澤秀哉 同教授、豊川知華 同博士課程学生(日本学術振興会特別研究員)らの研究グループは、東京大学が主導するImPACTプログラム「セレンディピティの計画的創出」に参画し、細胞の高速識別・分取技術「Intelligent Image-Activated Cell Sorter」を開発しました。本技術により、希少細胞(変異株)の選抜時間が従来の約6,500分の1に短縮されました。
本研究成果は、2018年8月28日に米国の科学誌「Cell」のオンライン版に公開されました。
研究者からのコメント
今回開発した技術により、従来は手作業で行っていた稀少細胞(変異株)の選抜時間が約6,500分の1に短縮され、偶然の幸運な発見(Serendipity)が可能になることを実証しました。今後はこの新技術により、環境変動に応答して微細藻の光合成を支えるCO2濃縮機構や、バイオ燃料生産や細胞増殖を制御する新奇因子の発見に向かって研究を最大限に加速していきたいと思います。
概要
多種多様な細胞の組成や構造、形態などと生理機能の関係を調べることは、生物学における主題の一つですが、従来の技術では、個々の細胞から得られる情報量と、解析可能な細胞数がトレードオフの関係となっており、多様な細胞を網羅的に研究するうえで限界となっていました。
本研究では、大量の細胞集団に含まれる一つ一つの細胞を高速に撮像し、深層学習など最先端の情報処理技術でそれらの画像をリアルタイムに判別して、細胞集団の中から特定の細胞を分取する基盤技術「Intelligent Image-Activated Cell Sorter」を確立しました。さらに、光合成やバイオ燃料の研究に使われる緑藻類クラミドモナスと血液中に含まれる血小板を1秒間に約100回のスピードで撮像・判別・分取できることを示し、本技術の実用性と有効性が示されました。
本研究成果により、従来の細胞計測技術では検出・分取できなかった細胞を分取して解析することで、生命科学分野における様々な発見やバイオ産業や医療分野での開発が大きく発展すると期待されます。
図:今回開発された技術を用いた緑藻クラミドモナス変異株の選抜
詳しい研究内容について
世界初のIntelligent Image-Activated Cell Sorterを開発 -細胞画像の深層学習により高速細胞選抜を実現-
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.cell.2018.08.028
Nao Nitta, Takeaki Sugimura, Akihiro Isozaki, Hideharu Mikami, Kei Hiraki, Shinya Sakuma, Takanori Iino, Fumihito Arai, Taichiro Endo, Yasuhiro Fujiwaki, Hideya Fukuzawa, Misa Hase, Takeshi Hayakawa, Kotaro Hiramatsu, Yu Hoshino, Mary Inaba, Takuro Ito, Hiroshi Karakawa, Yusuke Kasai, Kenichi Koizumi, SangWook Lee, Cheng Lei, Ming Li, Takanori Maeno, Satoshi Matsusaka, Daichi Murakami, Atsuhiro Nakagawa, Yusuke Oguchi, Minoru Oikawa, Tadataka Ota, Kiyotaka Shiba, Hirofumi Shintaku, Yoshitaka Shirasaki, Kanako Suga, Yuta Suzuki, Nobutake Suzuki, Yo Tanaka, Hiroshi Tezuka, Chihana Toyokawa, Yaxiaer Yalikun, Makoto Yamada, Mai Yamagishi, Takashi Yamano, Atsushi Yasumoto, Yutaka Yatomi, Masayuki Yazawa, Dino Di Carlo, Yoichiroh Hosokawa, Sotaro Uemura, Yasuyuki Ozeki, Keisuke Goda (2018). Intelligent Image-Activated Cell Sorting. Cell, 175.