2024-05-28 東京大学
メモリーCD8 T細胞とは感染やワクチンによって誘導される免疫記憶を担う免疫細胞の1つであり、体内で長期間維持され、ウイルス感染細胞やがん細胞を生体内から迅速に除去するために重要な細胞です。従来、CD4 T細胞を持たないMHCクラスII(以下、「MHCII」)欠損マウスではメモリーCD8 T細胞の数が減少することから、メモリーCD8 T細胞の恒常性維持にCD4 T細胞の存在が必要であると考えられてきました。しかしながら、東京大学大学院薬学系研究科の瀬戸口留可准教授、千菊智也大学院生、堀昌平教授らによる研究グループは、MHCII欠損マウスにおけるメモリーCD8 T細胞の減少は、CD4 T細胞欠損によるのではなく、炎症性サイトカインであるIFN-ɤの産生亢進にあることを明らかにしました。そして、MHCII欠損マウスのメモリーCD8 T細胞では、寿命の長いメモリーCD8 T細胞に特徴的な遺伝子の発現、なかでも細胞死を抑制する遺伝子の発現が減少し、短命であるエフェクターCD8 T細胞に特徴的な遺伝子の発現が上昇したことから、持続的なIFN-ɤシグナルはメモリーCD8 T細胞をエフェクターCD8 T細胞に分化させることで免疫記憶を障害することがわかりました。また、MHCII欠損マウスでは、大腸のCD8 T細胞が過剰にIFN-ɤを産生していることも明らかにしました。
本研究は炎症や持続感染によって誘導される炎症性サイトカインIFN-ɤにより免疫記憶が弱体化する可能性を示唆しています。
論文情報
Ruka Setoguchi*, Tomoya Sengiku, Hiroki Kono, Eiryo Kawakami, Masato Kubo, Tadashi Yamamoto, Shohei Hori, “Memory CD8 T cells are vulnerable to chronic interferon-γ signals but not to CD4 T cell deficiency in MHCII-deficient mice,” Nature Communications: 2024年5月28日, doi:10.1038/s41467-024-48704-4.
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