アクチビンEが脂肪燃焼細胞の増加を促進することを解明~肥満解消の新たなプレイヤーを発見~

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2018-11-02 京都大学,北里大学,奈良先端科学技術大学院大学

舟場正幸 農学研究科准教授、橋本統 北里大学准教授、栗崎晃 奈良先端科学技術大学院大学教授らの研究グループは、肝臓から分泌されるアクチビンEというタンパク質が、脂肪を燃焼させる褐色脂肪細胞の活性化やベージュ脂肪細胞の増加を促進し、エネルギー代謝を亢進させる作用を持つことを見出しました。

本研究成果は、2018年10月31日に米国の国際学術誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント
アクチビンEは肝臓で高発現しますが、その機能に関しては理解が進んでおらず、忘れ去られたタンパク質でした。北里大・橋本先生を中心にその機能解析に取り組んできました。訳のわからない状態が長年続きましたが、ホルモンとして作用し、褐色・ベージュ脂肪細胞の機能を制御しているのではないか、と思えるデータを得ることができ、本研究成果につながりました。今回の研究成果を起点にさらに研究を展開させることができたらと願っています。

概要

アクチビンEは、肝臓で特異的に作られる細胞の分化・増殖因子の一種として発見されましたが、長い間その機能は不明でした。

本研究グループは、アクチビンEを肝臓から過剰に分泌するマウスを作製したところ、対照のマウスと比べて血糖値が低く、インスリン感受性が向上しており、体温が高めでエネルギー代謝が亢進していることが分かりました。さらに、このマウスは高脂肪食を与えた場合でも体重増加が抑えられていました。そこで、白色脂肪組織を詳しく調べてみたところ、ベージュ脂肪や褐色脂肪のタンパク質「Ucp1」の量が増加し、ベージュ脂肪細胞自体も増加していたことから、脂肪組織において熱産生が盛んになり、エネルギー代謝が上昇していると考えられました。

一方、アクチビンE遺伝子を欠損させたマウスでは、寒冷刺激に対する反応が鈍く、白色脂肪組織中のベージュ脂肪細胞の減少が原因と考えられる低体温の症状がみられました。さらに、アクチビンEタンパク質を、培養した褐色脂肪細胞にふりかけたところ、Ucp1の量が増加したことから、アクチビンEに褐色脂肪細胞の熱産生を直接活性化させる働きがあることを確認しました。

本研究により、アクチビンEは、肝臓から分泌されるホルモン(ヘパトカイン)として働き、褐色脂肪を活性化させ、白色脂肪でベージュ脂肪細胞を増加させることで、余分なエネルギーを熱に変換して消費させる役割があることが明らかになりました。本研究成果は、糖尿病をはじめ種々の生活習慣病の原因となる肥満の治療薬の開発につながることが期待されます。

図:アクチビンEのエネルギー代謝亢進作用

詳しい研究内容について

肥満解消に新たなプレイヤー
北里大学獣医学部 橋本 統 准教授、京都大学大学院農学研究科 舟場 正幸 准教授、奈良 先端科学技術大学院大学 栗崎 晃 教授らの研究チームは、肝臓から分泌されるアクチビ ン E というタンパク質が、脂肪を燃焼させる褐色脂肪細胞の活性化やベージュ脂肪細胞の 増加を促進し、エネルギー代謝を亢進させる作用を持つことをつきとめました。この新た な発見は、糖尿病などのメタボリックシンドロームの原因となる肥満の予防・治療の開発 につながることが期待されます。本件に関する論文は、2018 年 10 月 30 日午前 11 時(ア メリカ東部時間)、国際学術誌 Cell Reports のオンライン版に掲載されました。

発表内容
アクチビン E は、肝臓で特異的に作られる細胞の分化・増殖因子の一種として発見され ましたが、長い間その機能は不明でした。今回アクチビン E を肝臓から過剰に分泌するマ ウスを作製したところ、対照のマウスと比べて血糖値が低く、インスリン感受性が向上し ており、体温が高めでエネルギー代謝が亢進していることが分かりました。さらに、この マウスは高脂肪食を与えた場合でも体重増加が抑えられていました。白色脂肪組織を詳し く調べてみたところ、ベージュ脂肪や褐色脂肪の Ucp1 の量が増加し、ベージュ脂肪細胞 自体も増加していたことから、脂肪組織において熱産生が盛んになり、エネルギー代謝が 上昇していると考えられました。

一方、アクチビン E 遺伝子を欠損させたマウスでは、寒冷刺激に対する反応が鈍く、白 色脂肪組織中のベージュ脂肪細胞の減少が原因と考えられる低体温の症状がみられまし た。さらに、アクチビン E タンパク質を、培養した褐色脂肪細胞にふりかけたところ、 Ucp1 の量が増加したことから、アクチビン E に褐色脂肪細胞の熱産生を直接活性化させる 働きがあることを確認しました。

以上の結果から、アクチビン E は、肝臓から分泌されるヘパトカインとして働き、褐色 脂肪を活性化させ、白色脂肪でベージュ脂肪細胞を増加させることで、余分なエネルギー を熱に変換して消費させる役割があることが明らかになりました。このアクチビン E のダ イエット効果は、糖尿病をはじめ種々の生活習慣病の原因となる肥満の治療薬につながる 可能性があります。

研究の背景
日本人男性の約30%、女性の約20%が肥満であり、全世界の3人に1人が肥満または過体重 であると言われています。肥満に伴い、糖尿病、高血圧、心臓病、通風、がん等の様々な 疾患を発症しやすくなることが知られています。最近、この万病の元である肥満の有効な 予防・治療法のターゲットとして褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞が注目されています。

肥満は白色脂肪組織への過剰な脂肪蓄積症であり、過剰に取り込んだエネルギーを脂肪 に溜め込んでいる状態です。褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞は、余分なエネルギーを熱 に変換して消費することができるため、この細胞の活性化や量を調節する新たな因子の発 見が期待されていました。

人間の大人では、げっ歯類のような典型的な褐色脂肪はほとんどなく、白色脂肪組織中 に誘導される特殊な褐色脂肪であるベージュ脂肪細胞が熱産生の一部を担っており、その ため白色脂肪をベージュ脂肪へと変化させる外的因子に注目が集まっていました。本研究 では、褐色脂肪を活性化したり、ベージュ脂肪化を促進する新たな外的因子として、肝臓 から分泌されるホルモン(ヘパトカイン)であるアクチビンEを発見しました。

アクチビンEは、その遺伝子配列情報から、TGF-βファミリーに属する細胞の分化・増 殖因子の一つで肝臓で作られる因子として発見されましたが、長い間その機能は不明でし た。マウスに高脂肪食を与えたり、空腹にすると肝臓のアクチビンE遺伝子の発現が上昇 することから、栄養状態に関連する機能が予想されていましたが、その役割は謎でした。

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