ダイズ根圏へのイソフラボン供給量を増やす酵素を発見~植物が機能性成分を根から土壌へ分泌するメカニズムの理解に貢献~

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2023-02-10 京都大学

イソフラボン類は、豆腐や味噌などのダイズ食品に含まれている、私たちにとって身近な植物が生産する代謝物です。ダイズの植物体にとってのイソフラボン類は、窒素栄養の少ない土壌で窒素固定をする根粒菌と共生したり、病原菌から身を守ったりするなど、自然環境を生き抜くために必要な物質であることが知られています。しかし、ダイズの細胞の中で生産されるイソフラボン類が、実際に機能する根の外側の土壌領域(=根圏)までどのように運ばれるのかについてはこれまで十分に明らかにされていませんでした。

杉山暁史 生存圏研究所准教授、松田陽菜子 農学研究科博士課程学生、中安大 生存圏研究所特任助教らの研究グループは東北大学、京都先端科学大学、東京農工大学、龍谷大学、農業・食品産業技術総合研究機構の研究者と共同で、ダイズの根に存在する酵素の働きが、ダイズ根圏へのイソフラボン類の分泌に関与していることを明らかにしました。一般に、ダイズの根の細胞の中では、大部分のイソフラボン類は配糖体として存在することが知られています。本研究では、このイソフラボン配糖体を根圏で機能する形態である非配糖体(アグリコン)に変換するICHG酵素に着目し、その機能を失った変異体を用いて実験を行いました。その結果、ICHG酵素が正常に機能する野生型個体と比べて、変異体の根圏土壌ではイソフラボン類の含有量が減少していることが明らかになり、ICHG酵素の働きによりダイズ根圏へのイソフラボン類の供給量が増加することが明らかになりました。ダイズのイソフラボン類だけでなく、多くの植物が多様な代謝物を根外へ分泌しています。本研究成果は、植物が細胞内で生産した代謝物を根外へ分泌するメカニズムの一端を明らかにしたものであり、植物根圏で機能する有用物質を農業へ活用する研究につながります。

本研究成果は、2023年1月31日に、国際学術誌「Plant and Cell Physiology」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント
「自ら動くことのできない植物は、多様な代謝物を駆使して過酷な自然環境を生き抜いています。植物の生存戦略への理解を深め、植物が元来持つ力を最大限利用することができれば、肥料や農薬に過度に依存しない持続可能な農業の実現につながると期待しています。本研究成果は、実験室での実験だけでなく、実際にダイズが栽培されている圃場で行われた実験の結果によりもたらされた点でも価値があると考えています。今後も実験室と圃場の実験の両方を行い、農業現場での応用を意識した研究に取り組んでいきます。」(松田陽菜子)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:杉山 暁史
研究者名:中安 大

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生物化学工学
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