コラーゲンの糸で腹膜炎と腸管の癒着を簡便に予防する方法を開発

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2018/11/06  佐賀大学,農業・食品産業技術総合研究機構
【要旨】腹腔内に留置するだけで、長期間に渡り、腹膜炎を軽減し、線維化と腸管の癒着を抑制する画期的な糸状の高密度コラーゲン(組織再生糸)の開発に成功
【開発の背景】長期間の腹膜透析や腹腔内の手術後に腹膜の線維化や腸管の癒着が生じることが多い。既存の癒着防止シートは体内に留置後、わずか約 1 週間程度の作用しかなく、長期間の効果はない。さらにサイズが大きく、繰り返し腹腔内に留置することは困難であり、現状では腹膜炎、腹膜線維化と腸管癒着に対する標準的予防法は未だ確立されていない。本研究では、簡単な操作とわずかな患者侵襲(傷・痛み)で腹腔内に留置できるデバイスの開発を目指した。佐賀大学と農研機構からなる研究グループは、高密度コラーゲン新素材『コラーゲンビトリゲル®』の抗炎症・抗線維化作用に着目し、新しい形状加工技術を開発することで、腹膜炎と腸管の癒着を簡便に予防することが出来る糸状コラーゲンデバイス(組織再生糸)を確立した。
【開発の内容】佐賀大学 医学部および農研機構 生物機能利用研究部門からなるの開発経験から、創部への留置が簡便で密着性に優れる糸状のコラーゲンビトリゲル®を着想し、医療用ブタ皮膚由来アテロコラーゲンを原料とする糸状のアテロコラーゲンビトリゲル®を開発した。実験的腹膜炎動物を用いて治療効果を非治療群、ゲル状のコラーゲンと比較したところ、非治療群では高度の腹膜炎、腹膜線維化、腸管癒着が生じた。ゲル状のコラーゲンでは腹腔内での炎症、線維化、腸管の癒着に対する抑制作用が短期間のみ認められたが、糸状アテロコラーゲンビトリゲル治療群では長期間に渡る抑制効果が認められた。
本研究内容は、英国科学誌 Biomaterials Science(電子版)に、日本時間で 10 月 30 日受理・公開された(doi information: 10.1039/C8BM00536B)。
【今後の展望】本製品は取り扱いが容易な糸状製品であるため、腹膜透析治療や腹腔内手術(消化器外科、産婦人科など)が実施されている医療施設への導入が容易である。今後は、製薬企業の共同研究・協力を仰ぎ、できるだけ早期に臨床試験を開始する予定である。
※「ビトリゲル®」は、農研機構の登録商標(登録番号:第 5602094 号)です。
【謝辞】
本研究は国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム「コラーゲンビトリゲルの形状加工技術を活用した医療機器および創薬支援ツールの開発」(平成 27−28 年度)および九州⼤学 ARO 次世代医療センター平成29年度橋渡し研究・新規開発シーズの助成を受けたものです。
【問い合わせ先】
青木 茂久 准教授 (佐賀大学 医学部 病因病態科学):コラーゲンビトリゲル医療応用  佐賀大学鍋島キャンパス
竹澤 俊明 主席研究員 (国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門新産業開拓研究領域):コラーゲンビトリゲル発明・開発 https://pursue.dc.affrc.go.jp/form/fm/naro001/press

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生物化学工学
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