てんかん発作へのグリア細胞ネットワークの関与
2019/08/23 国立遺伝学研究所
川上研究室・発生遺伝学研究室
Glia-neuron interactions underlie state transitions to generalized seizures
Carmen Diaz-Verdugo, Sverre Myren-Svelstad, Ecem Aydin, Evelien van Hoeymissen, Celine Deneubourg, Silke Vanderhaeghe, Julie Vancraeynest, Robbrecht Pelgrims, Mehmet LLyas Cosacak, Akira Muto, Caghan Kizil, Koichi Kawakami6, Nathalie Jurisch-Yaksi & Emre Yaksi
Nature Communications 10, Article number: 3830 (2019) DOI:10.1038/s41467-019-11739-z
重篤なてんかん発作が発生すると脳神経細胞のはたらきとつながりが大きく変化します。この変化を通して、脳神経細胞のネットワークはバランスのとれた安静状態から、きわめて活動的、同期的になります。しかしながら、この変化の根底にあるしくみはわかっていませんでした。
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の川上浩一教授らとノルウェー科学技術大学カヴリ統合神経科学研究所ほかの共同研究グループは、モデル生物のゼブラフィッシュにおいて、てんかん発作を人為的に発生させて、脳全体の神経細胞とグリア細胞の活動をカルシウムイメージングによって調べました。その結果、てんかん発作直前に、神経細胞に先んじてグリア細胞のネットワークが大きく活動することを見出しました。
これまでのてんかん治療薬は、神経細胞やその活動をターゲットにしたものが主流でしたが、この研究成果によってグリア細胞やその活動をターゲットにしたてんかん治療薬の開発が期待できます。
本研究成果は、英国科学雑誌「Nature Communications」に2019年8月23日午前10時(英国夏時間)に掲載されました。
以下の実験技術が本研究成果の基盤の一つになっています。
図: ゼブラフィッシュ脳のグリア細胞の活動のカルシウムイメージング
ゼブラフィッシュの稚魚で人為的にてんかんを発生させたときのグリア細胞の活動の様子をカルシウムイメージングで記録した。紫色の部分がグリア細胞ネットワークを示す。