2020-05-13 京都大学
山﨑曜 理学研究科博士課程大学院生(現・国立遺伝学研究所・日本学術振興会特別研究員)、渡辺勝敏 同准教授らは、武島弘彦 東海大学特定研究員、鹿野雄一 九州大学准教授、大迫尚晴氏、鈴木寿之 大阪自然史博物館外来研究員、西田睦 琉球大学長らと共同で、琉球列島に分布するハゼ科魚類の遺伝分析を行った結果、形態や色彩が酷似した種が、1つの祖先種から5つの島で繰り返し誕生していたことを発見しました。そして、その種の誕生はより大きな島で起こりやすかったことを明らかにしました。
本研究グループは、琉球列島において、淡水域で一生を過ごす「キバラヨシノボリ」と呼ばれるハゼ科魚類の遺伝子を詳細に解析しました。その結果、各島の「キバラヨシノボリ」は類似した形態、色彩、生態をもつにもかかわらず、川と海を回遊する近縁種のクロヨシノボリから別々に進化しており、その回数は琉球列島全体で合計5回にも上ることが判明しました。そこでどのような特徴をもつ島で「キバラヨシノボリ」が種分化しやすかったかを解析したところ、より大きい島で種分化する確率が高いことが示されました。
本研究が明らかにした複数の島での「キバラヨシノボリ」の誕生は、類似した種が繰り返し進化する「平行種分化」と呼ばれる非常に珍しい現象の好例といえます。また本研究は生息場所のサイズが十分に大きければ、新たな種が生まれる可能性が高い、という法則性を示唆しています。
本研究成果は、2020年4月19日に、国際学術誌「Molecular Ecology」のオンライン版に掲載されました。
図:「キバラヨシノボリ」は7つの島に分布し、そのうち5箇所でクロヨシノボリから独自に進化した
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1111/mec.15415
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/250818
Yo Y. Yamasaki, Hirohiko Takeshima, Yuichi Kano, Naoharu Oseko, Toshiyuki Suzuki, Mutsumi Nishida, Katsutoshi Watanabe (2020). Ecosystem size predicts the probability of speciation in migratory freshwater fish. Molecular Ecology.