染色体DNAをつかまえろ!〜コヒーシンローダーの役割〜

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2020-11-13 国立遺伝学研究所 村山研究室・染色体生化学研究室

DNA Binding by the Mis4Scc2 Loader Promotes Topological DNA Entrapment by the Cohesin Ring.

Yumiko Kurokawa and Yasuto Murayama.

Cell Reports 33, 108357(2020) DOI:10.1016/j.celrep.2020.108357

生命の遺伝情報はDNAに書き込まれており、細胞の核内で染色体のかたちでコンパクトにまとめられています。細胞分裂時にはコピーされた後に一時的に割り箸のように接着しています(姉妹染色分体間接着)。姉妹染色分体間接着の形成は遺伝情報を均等に分配されるために必須であり、「コヒーシン」と呼ばれるリング状のタンパク質がそのリングの中にDNAを2本取り込むことで、DNA同士を束ねていると考えられています。しかし、コヒーシンがDNAをリング内に取り込む(トポロジカルなDNA結合)詳細なメカニズムは明らかになっていませんでした。

新分野創造センター・染色体生化学研究室の黒川裕美子特任研究員と村山泰斗特任准教授は、分裂酵母コヒーシンの姉妹染色分体間接着の形成に必須のコヒーシンローダータンパク質Mis4に着目しました。Mis4はこれまでの研究からコヒーシンのトポロジカルなDNA結合を促進することが明らかになっていますが、Mis4がどのようにコヒーシンの反応を促進するのかは不明でした。今回の研究により、Mis4が2か所でDNAと直接結合することが明らかとなり、このDNA結合によってコヒーシンーDNA―Mis4の3者複合体の形成だけでなく、コヒーシンリング内へのATPase依存的なDNAの取り込みが可能となることが明らかになりました。

本成果によりコヒーシンの染色体結合に重要なメカニズムが明らかになりました。コヒーシンやローダーの機能欠損は様々な疾患や不妊と相関があることが知られており、これらの原因究明や予防治療法の開発に繋がると期待されます。

本研究成果は、2020年11月10日 (米国東部時間) に米国科学雑誌 Cell Reports に掲載されました。

本研究は、科学研究補助金 (19H03160)、武田科学振興財団特定助成、内藤記念科学奨励金の支援を受けておこなわれました。

Figure1

図:ローダーによるコヒーシンのトポロジカルなDNA結合促進モデル。DNAはローダーとコヒーシンに挟み込まれる形となり、安定な3者複合体が形成される (赤丸が同定したDNA結合部位)。その後、コヒーシンの構造変化が促されてリングの一部が開けられ、DNAがリング内へ押し込まれることでトポロジカルなDNA結合が完了する。

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細胞遺伝子工学
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