北大と日立が共同開発した2軸CBCT機能及び2軸四次元CBCT機能が医療機器の製造販売承認を取得

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高精度陽子線治療の提供に期待

2020-11-13 北海道大学,株式会社日立製作所,日本医療研究開発機構

ポイント
  • 従来のCBCT機能の課題であった撮影時間が大幅に削減。
  • 動く部位における腫瘍及び周辺組織の鮮明な三次元画像の取得が可能。
  • より多くの患者に対して高精度な陽子線治療を提供できるようになると期待。
概要

北海道大学大学院医学研究院の清水伸一教授らの研究グループと株式会社日立製作所(日立製作所)は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「橋渡し研究戦略的推進プログラム」等の支援により、新たな高精度陽子線治療のための2軸CBCT*1機能及び2軸四次元CBCT機能を開発し、製造販売承認を取得しました。

これらの機能により、CBCT撮影の高速化及び動く部位の鮮明な三次元画像の取得が可能となり、腫瘍に対する陽子線治療のさらなる高精度化が期待されます。

背景

腫瘍に対する陽子線治療を高精度化するためには、体内の情報をより詳細に把握することが必要です。通常の二方向からの二次元X線画像から得られる骨の位置、動体追跡技術*2によって得られる腫瘍の動きの情報に加えて、腫瘍周辺の正常組織、特に軟組織の位置・形状が把握できれば、腫瘍への陽子線照射精度を高めると同時に、正常組織への被ばくのリスクを大幅に低減することが可能となります。これを実現するため、北海道大学と日立製作所は陽子線治療における回転ガントリー*3搭載型CBCTシステムを共同開発し、2015年3月に医薬品医療機器等法*4に基づく医療機器の製造販売承認を取得しました。

しかし、従来のCBCTは撮影に時間を要する、また動く部位の撮影では鮮明な画像が得られないという課題があり、適用可能な患者及び疾患に制約がありました。

研究成果

これらの課題を解決するため、北海道大学と日立製作所はAMEDの「未来医療を実現する医療機器・システム開発事業」の支援を受け、2軸CBCT機能及び2軸四次元CBCT機能を共同開発しました。

2軸CBCT機能は、回転ガントリーに搭載された互いに直交する二対のX線撮像系を同時に用いて撮影を行う技術で、CBCT撮影に要する時間をほぼ半減させることが可能となります(図1)。


図1.2軸CBCTの概要

2軸四次元CBCT機能は、二対のX線撮像系を同時に用いることで体内の腫瘍内あるいは腫瘍近傍に留置された金マーカの三次元座標をリアルタイムで算出する動体追跡技術を応用し、金マーカが計画位置から数ミリ以内に存在する状態で撮影された投影画像のみを用いてCBCT画像を再構成する技術で、呼吸等により動く部位であっても鮮明な体内の三次元画像を取得することが可能となります(図2)。


図2.4次元CBCTの概要

北海道大学と日立製作所は、AMEDの「橋渡し研究戦略的推進プログラム」の支援を受け、2軸CBCT機能及び2軸四次元CBCT機能の臨床的評価を実施、医薬品医療機器等法に基づく医療機器の製造販売承認を申請し、2020年9月10日に承認を取得しました。

今後への期待

2軸CBCT機能により、従来のCBCT機能の課題であった撮影時間の大幅な削減が可能となり、患者負担の軽減及び治療のスループット向上によるCBCTの実用性の向上が期待されます。また、2軸四次元CBCT機能により、二次元のX線画像や従来のCBCTでは視認が困難であった動く部位における腫瘍及び周辺組織の鮮明な三次元画像を取得することが可能となり、患者位置決め精度の飛躍的な改善が期待されます。2軸CBCT機能及び2軸四次元CBCT機能の実用化により、より多くの患者に対して高精度な陽子線治療を提供することが可能になると考えられます。

研究費・研究支援

本研究開発は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の以下の事業の支援を受けて行われました。

  1. 橋渡し研究戦略的推進プログラム「シーズB:動体追跡技術を発展させ、がん標的の3次元的形状と位置の時間的変化を把握する実体適合陽子線治療(Real-world Adaptive Proton Beam Therapy)システムの非臨床POC取得」(2018-2020、研究開発代表者・清水伸一)
    (橋渡し研究支援拠点である北海道大学拠点の支援を受けて実施している。)
  2. 未来医療を実現する医療機器・システム開発事業低侵襲がん診療装置研究開発プロジェクト「微粒子腫瘍マーカとリアルタイム3次元透視を融合した次世代高精度粒子線治療技術の開発」(2015-2018、研究開発代表者・白土博樹)
用語解説
*1 CBCT
コーンビームCT(Cone Beam CT)のこと。治療装置のサイドに装備された撮影装置を使って、コーンビーム(円錐状のビーム)で撮影するCT。
*2 動体追跡技術
腫瘍近傍に1.5ないしは2mmの金マーカを刺入し、CT装置であらかじめ腫瘍中心との関係を把握しておき、2方向からのX線透視装置を利用し、透視画像上の金マーカをパターン認識技術にて自動抽出、空間上の位置を周期的に繰り返し計算する。そして、金マーカが計画位置から数mmの範囲にある場合だけ照射。これを高速で行うことで、呼吸などにより体内で位置が変動するがんでも高精度で照射を行うことが可能になる。
*3 回転ガントリー
放射線治療において、治療ビームの出射方向を患者を中心に回転させることで、あらゆる角度からの治療を可能とする装置。
*4 医薬品医療機器等法
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律のこと。薬機法ともよばれる法律で、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器及び再生医療等製品の品質、有効性及び安全性の確保を目的とし、製品の製造販売承認や各種規制が定められている。
お問い合わせ先
研究内容に関すること

北海道大学大学院医学研究院 教授 清水伸一(しみずしんいち)

株式会社日立製作所 ライフ事業統括本部 ヘルスケア事業部 担当:梅澤(うめざわ)

配信元

北海道大学総務企画部広報課

株式会社日立製作所 ライフ統括事業本部 企画本部 担当:下村

AMEDに関すること

国立研究開発法人日本医療研究開発機構
シーズ開発・研究基盤事業部 拠点研究事業課
橋渡し研究戦略的推進プログラム担当

国立研究開発法人日本医療研究開発機構
医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課
先進的医療機器・システム等技術開発事業担当

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