狙った細胞内小器官脂質の可視化に成功 ~オートファゴソーム形成機構解明に貢献~

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2020-09-22 京都大学,科学技術振興機構

京都大学 大学院工学研究科 浜地 格 教授、田村 朋則 講師らの研究グループは、細胞内小器官(オルガネラ)膜の主要構成成分であるリン脂質(ホスファチジルコリン:PC)を選択的に蛍光標識し、細胞内での動きをリアルタイムに可視化できる新しい方法を開発しました。

PCは主に小胞体やゴルジ体で生合成された後、他のオルガネラ(例えばミトコンドリア膜や形質膜)に輸送されます。こうしたPC輸送は細胞の機能や生存に重要ですが、直接観察する方法が無かったため、これまで理解が不十分でした。本研究グループは、「オルガネラに局在する反応性試薬」と「PCの代謝的アジド化法」を組み合わせた独自のアイデアで、特定のオルガネラにあるPCを選択的に蛍光標識することに成功し、オルガネラ間PC輸送の可視化を世界で初めて実現しました。さらに、オートファジー(2016年に大隅 良典 博士がノーベル賞受賞)の際に出現する膜の起源解明に本手法を適用し、小胞体膜がオートファゴソームにPCを供給する様子を生細胞内で直接観察することに初めて成功しました。この成果は、研究ツールの乏しさゆえに不明な点の多い細胞内脂質輸送機構の解明に向けた大きなブレークスルーにつながると期待されます。

本研究成果は、2020年9月22日に国際学術誌「Nature Chemical Biology」に掲載されます。

科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 総括実施型(ERATO)

研究領域:「浜地ニューロ分子技術」(研究総括:浜地 格 京都大学 教授)

文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究

研究領域:「分子夾雑の生命化学」(領域代表者:浜地 格 京都大学 教授)

研究課題名:「分子夾雑下での生命分子の直接修飾/機能解析を実現する有機化学」(研究代表者:浜地 格 京都大学 教授)

詳しい資料は≫

“Organelle membrane-specific chemical labelling and dynamic imaging in living cells”
DOI:10.1038/s41589-020-00651-z

<研究に関すること>

田村 朋則(タムラ トモノリ)
京都大学 大学院工学研究科 合成・生物化学専攻 講師

加藤 豪(カトウ ゴウ)
科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部 グリーンイノベーショングループ 調査役

<報道担当>

京都大学 総務部 広報課 国際広報室
科学技術振興機構 広報課

生物化学工学
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