2020-09-28 京都大学
武内章英 医学研究科准教授、萩原正敏 同教授らの研究グループは、九州大学、名古屋大学と共同で、神経幹細胞の運命を制御する分子としてRNA結合タンパク質「Qk(quaking)」を発見し、その制御メカニズムを明らかにしました。
ヒトの脳は大きく分けて神経細胞とグリア細胞という2種類の細胞から構成されており、神経細胞は神経回路を形成し、グリア細胞は脳の構造や機能の維持を行っています。この2種類の細胞は神経幹細胞という脳内の未分化な万能細胞からそれぞれ生み出されます。胎児期に脳が作られる段階で、神経幹細胞は最初神経細胞だけを作り(神経新生)、その後グリア細胞だけを作る(グリア新生)ことが知られていますが、どのようなメカニズムで神経幹細胞が産生する細胞種を大きく切り変えるのか長年の謎でした。
神経幹細胞の運命を決めるメカニズムの解明は、脳の形成機構の理解を大きく進め、iPS細胞等から脳の細胞を人為的に誘導することに応用できる成果です。さらに、Qkの遺伝子変異は悪性の脳腫瘍である神経膠芽腫や精神疾患の統合失調症などに多く認められており、これらが神経幹細胞の分化異常により起こる可能性が示唆されることから、原因不明の疾患の解明と治療方法の開発につながる成果です。
本研究成果は、2020年9月25日に、国際学術誌「Stem Cell Reports」に掲載されました。
書誌情報
日刊工業新聞(9月25日 37面)に掲載されました。