国立がん研究センター東病院がマルチオミックス解析を用いた国際多施設共同前向き観察研究(TITANIA study)に国内初参画

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世界の主要施設と連携し、新たながん診断・治療法の開発を目指す

2020-10-21 国立がん研究センター

発表のポイント

  • 国立がん研究センター東病院は、ドイツのIndivumed Group社が世界各国の病院と連携して行っている国際多施設共同前向き観察研究(TITANIA study:ティタニアスタディー)に国内研究機関として初めて参画し、2020年10月19日より研究を開始しました。
  • TITANIA studyは、高品質な検体管理体制の下、がんの手術を受ける患者さんの臨床情報および組織・血液検体を収集して、人工知能(AI)によるマルチオミックス解析を行う世界最大規模の研究です。
  • 本研究には、現在9つのワーキンググループが設置され、世界各国のマルチオミックスデータを統合して、がんの発症・進展に関わるメカニズムを解明し、新たながん個別化医療の開発を目指します。このワーキンググループに、国立がん研究センター東病院の研究者が参画し、世界の主要施設とともに新たながん診断・治療技術の開発に向けた国際共同研究に貢献していきます。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)東病院(病院長:大津 敦、千葉県柏市、以下東病院)は、2020年4月よりドイツのIndivumed Group社*1が世界各国の病院と連携して行っている国際多施設共同前向き観察研究(TITANIA study:ティタニアスタディー)に国内で初めて参画し、2020年10月19日より研究を開始しました。

TITANIA studyでは、がんの手術を受ける患者さんの臨床情報および組織・血液検体を用いてマルチオミックス解析*2を行います。がんの発症・増殖に関わる複雑なメカニズムを解明し、がん個別化医療のさらなる発展を目指します。膨大且つ複雑なデータのマルチオミックスデータは、Indivumed Group社が開発した「IndivuType*3」によって、人工知能(AI)による深層学習を用いて解析します。また本研究では、正確な結果を得るために高度な検体管理技術が求められます。東病院は国内有数の治験実績を誇り、トランスレーショナル(TR)研究に精通していることから、厳しい研究要件にも対応可能な体制が整備されています。さらに各国のマルチオミックスデータを用いて、国際共同研究を推進するワーキンググループのメンバーに、東病院 消化管内科長の吉野孝之、大腸外科長の伊藤雅昭らが選出されました。

国際協調のもと、世界中から収集された大規模データを用いて、新たながん診断・治療技術の開発とさらなる国際貢献を目指します。

背景

近年、がんの個別化医療はマルチオミックス解析によって大きく進展する可能性があることが報告されています。これまで、ゲノム解析(ゲノミクス)・転写解析(トランスクリプトミクス)・蛋白質解析(プロテオミクス)・代謝物解析(メタボロミクス)など、個々の分子情報ごとに個別研究が進められていました。マルチオミックス解析に関する報告はいくつかあるものの、それらのほとんどは主にトランスクリプトミクスに集中しており、その他の分子情報に関するデータは少ないのが現状です。包括的かつ統合された解析を行うことにより、がんの発症・増殖に関わる複雑なメカニズムを解明すると考えられます。

また、質の高い臨床データとマルチオミックスデータの統合解析によって、優れた予後予測が可能であるという報告もある一方、臨床データとマルチオミックスデータの統合解析にかかる専門家への負担が大きく、高度な解析技術の開発・応用が求められています。

TITANIA studyではバイオインフォマティクス*4にもとづいた人工知能(AI)による深層学習を用いて解析することを計画し、臨床データとマルチオミックスデータを複合させた膨大なデータを解析するコンピューター技術の開発・応用を目指しています。

研究概要

TITANIA study(mulTi omIcs daTa cANcer dIagnostics therApies Study)では、手術前後の臨床情報・血液検体および手術で切除された組織検体と、術後10年目までの臨床情報および血液検体を、Indivumed Group社が開発したIndivuTypeを用いてマルチオミックス解析します。臨床情報は、性別や人種などによって食べ物や趣味趣向などが異なるため、従来の研究と比べ、より細かい情報を登録します。また、検体の品質・精度を確保するため、腫瘍を切除してから保存するまでの処理を10~20分以内に行います。本研究を推進するため、東病院では研究試料管理や人員の強化を行い、ハイクオリティな検体管理体制のもと取り組みます。

IndivuTypeは、人工知能(AI)による深層学習を用いてマルチオミックス解析を行います。IndivuTypeに世界各国から年間およそ10,000例のマルチオミックスデータが収集されることにより、世界最大規模の高品質なデータセットとなることが期待されます。

東病院では、2020年10月19日より、手術を予定している全ての種類の固形がんの患者さんを対象に研究を開始しました。1年目は大腸がんを中心に50名の患者さんに参加いただき、2年目以降は対象を順次拡大し、250名の患者さんに参加いただく予定です。

TITANIAstudy.jpg

展望

本研究により、AIによるマルチオミックス解析の患者さんの予後予測能の評価や、マルチオミックス解析による既存のバイオマーカーの検証がなされると、マルチオミックス解析に基づく個別化医療が推進されることが期待されます。この他にも、Indivumed Group社と共同でがんの性質をマルチオミックス解析により明らかにし、その成果をもとに新しいがん診断・治療技術の研究・開発を目指します。

用語解説

*1  Indivumed Group社
Indivumed Group社は医師主導で世界各国のオンコロジー会社とネットワークを構築し、オンコロジー領域での個別化医療を支援するためにがんの複雑なメカニズムを解明する事を事業目的としています。マルチオミックスによるアプローチこそがメカニズム解明への道であり、そのために高品質な疾患検体と疾患情報の獲得が重要だと考えています。IndivuServe、IndivuType、IndivuTestそれぞれ3つの事業部が、バイオマーカーと標的分子の探索、医薬品の開発、臨床試験、そして個別化医療などの製品やサービスを提供しています。

*2 マルチオミックス解析
遺伝子解析(ゲノミクス: Genomics)・RNA解析(トランスクリプトミクス: Transcriptomics)・蛋白質解析(プロテオミクス: Proteomics)・代謝物解析(メタボロミクス: Metabolomics)等をすべて一括して分析する手法で、“ミックス (-omics)”は総合的解析を意味します。

*3  IndivuType
「IndivuType」はマルチオミックスを基軸とした世界最大規模のデータベースです。症例ごとに全ゲノムシーケンス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、リン酸化プロテオミクスのデータなどが登録されており、タンパクの種類は症例あたり数千種類を超えることもあります。全ての症例情報は高度に管理された情報収集システムによって収集され、データの一貫性と正確性が保証されます。欧州、アメリカ、アジアなど世界各国の多くのがん専門機関から収集される何千もの症例情報は、AIや機械学習による解析プラットフォームに提供されます。

*4 バイオインフォマティクス
バイオ(生命科学)とインフォマティクス(情報科学)の融合分野で、生物が持っているさまざまな情報を、情報科学や統計学などのアルゴリズムを用いて解き明かす学問です。

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国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室(柏キャンパス)

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