2020-10-22 大阪大学,物質・材料研究機構,日本臓器製薬株式会社
大阪大学、NIMSおよび日本臓器製薬株式会社からなる研究チームは、末梢神経に直接巻いて神経の再生を促す薬剤含有ナノファイバーシートの商用規模での製造に成功し、ヒトを対象とした治験を11月から開始いたします。
概要
大阪大学 大学院医学系研究科の田中啓之 特任教授 (常勤) (運動器スポーツ医科学共同研究講座) 、物質・材料研究機構 (以下、NIMS) の荏原充宏グループリーダー (機能性材料研究拠点 スマートポリマーグループ) および日本臓器製薬株式会社 (以下 日本臓器製薬) からなる研究チームは、末梢神経に直接巻いて神経の再生を促す薬剤含有ナノファイバーシートの商用規模での製造に成功し、ヒトを対象とした治験を11月から開始いたします。
本シートは「手根管症候群」をはじめとする、末梢神経障害の新たな治療デバイスとして期待されており、ヒトを対象とした探索的治験を世界に先駆けて実施することで、早期の実用化を目指します。
これまで、神経保護を目的とした類似用途の医療機器は開発されていますが、神経の再生を促進する効果はありません。また、損傷部が完全に切断された場合のみ使用可能であったり、質感が硬く取り扱いが不便であったりなど、末梢神経障害には既存の医療機器では解決できない課題があり、新たな治療法の開発が望まれていました。2017年にNIMSの荏原充宏 グループリーダーと大阪大学の田中啓之 特任教授 (常勤) らの研究チームが、末梢神経機能の再生を促す新しい治療デバイスとして、神経の再生に重要な因子となる薬剤を含有させたナノファイバーシートを開発しました。その後、臨床への実用化に向けて日本臓器製薬が参画し、高品質で安定したシートの商用規模での製造に成功しました。実生産が可能な体制を整え、治験を始める運びとなりました。本シートが実用化されると、国内に年間で数十万人いるとされる、手根管症候群の患者に対する手根管開放術をはじめ、「末梢神経の外科的手術が必要な患者」を対象とした、年間約5万件の手術への適用が可能となります。