オートファゴソーム膜を伸ばす仕組みを解明 ~オートファジー最後の未知たんぱく質の正体が明らかに~

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2020-10-27 科学技術振興機構,微生物化学研究所,東京大学,東京工業大学,順天堂大学,理化学研究所,京都大学

ポイント

  • オートファジーにおいて、分解対象を包む袋状の膜(オートファゴソーム)が伸びていく仕組みは分かっていなかった。
  • 膜たんぱく質Atg9が脂質二重層の2つの層の間でリン脂質を往来させる活性を持ち、細胞質側に届いた脂質を反対の層に運ぶことで膜を伸ばすことが明らかとなった。
  • オートファゴソーム形成の分子機構が明らかとなり、オートファジーを制御する特異的制御剤の開発が加速すると期待される。

JST 戦略的創造研究推進事業において、微生物化学研究所の野田 展生 部長、的場 一晃 上級研究員らは、オートファジーを担うたんぱく質群のうちの1つであるAtg9が脂質二重層の2つの層の間でリン脂質を往来させる活性(脂質スクランブル活性)を持つことを発見し、その活性がオートファゴソーム膜の伸展を引き起こすことを明らかにしました。

細胞内のたんぱく質を分解する仕組みの1つであるオートファジーにおいて、オートファゴソームの形成は分解対象を決定する極めて重要なステップです。これまでに本研究グループは、脂質輸送たんぱく質Atg2がオートファゴソームを作るためのリン脂質を小胞体から運ぶことを明らかにしましたが、運ばれたリン脂質を使ってどのように膜が伸びるのか、その仕組みは分かっていませんでした。

研究グループは、機能が分かっていなかった酵母およびヒト由来の膜たんぱく質Atg9が、脂質スクランブル活性を持つことを試験管内の実験で明らかにしました。さらに酵母Atg9の立体構造をクライオ電子顕微鏡で調べた結果、脂質二重層の2つの層をつなぐ細孔を持つことが分かりました。また、細孔を形成するアミノ酸に変異を入れたところ試験管内でのAtg9の脂質スクランブル活性が失われ、この同じ変異により酵母におけるオートファゴソームの形成も阻害されることを見いだしました。これらのことから、Atg9は新規脂質スクランブラーゼであり、脂質輸送たんぱく質Atg2と協力してオートファゴソームの形成に働くという全く新しい仕組みを明らかにしました。

本研究によりオートファジーの基本原理が解明され、今後のオートファジーの特異的制御剤の開発に向けた基盤となることが期待されます。

本研究成果は、2020年10月26日(英国時間)に英国科学誌「Nature Structural & Molecular Biology」のオンライン版で公開されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)

研究領域:「ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術」

(研究総括:田中 啓二 東京都医学総合研究所 理事長)研究課題名:「オートファジーの膜動態解明を志向した構造生命科学」

研究代表者:野田 展生(微生物化学研究会 微生物化学研究所 部長)

研究期間:平成25年10月~令和2年3月

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Atg9 is a lipid scramblase that mediates autophagosomal membrane expansion”
(Atg9はオートファゴソーム膜伸展を担う脂質スクランブラーゼである)
DOI:10.1038/s41594-020-00518-w
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
野田 展生(ノダ ノブオ)
微生物化学研究会 微生物化学研究所 構造生物学研究部 部長

<JST事業に関すること>
保田 睦子(ヤスダ ムツコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ライフイノベーショングループ

<報道担当>

科学技術振興機構 広報課
微生物化学研究会 微生物化学研究所 知的財産情報室
東京大学 大学院医学系研究科・医学部 総務係
東京工業大学 総務部 広報課
順天堂大学 総務部 文書・広報課
理化学研究所 広報室 報道担当
京都大学 総務部 広報課 国際広報室

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