母性のホルモン:「オキシトシン」がオスの交尾行動を脊髄レベルで 促進する新たな局所神経機構‘ボリューム伝達’を解明

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2020-10-30 国立遺伝学研究所

Oxytocin influences male sexual activity via non-synaptic axonal release in the spinal cord.

Takumi Oti, Keita Satoh, Daisuke Uta, Junta Nagafuchi, Sayaka Tateishi, Ryota Ueda, Keiko Takanami, Larry J. Young, Antony Galione, John F. Morris, Tatsuya Sakamoto, Hirotaka Sakamoto

Current Biology 2020 October 29 DOI:10.1016/j.cub.2020.09.089

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岡山大学大学院自然科学研究科(理)の坂本浩隆准教授と神奈川大学理学部生物科学科の越智拓海特別助教(研究当時、大学院自然科学研究科院生)、川崎医科大学、富山大学、国立遺伝学研究所、米国エモリー大学、英国オックスフォード大学の国際研究グループは、脳で合成される母性のホルモン、「オキシトシン」が哺乳類の脊髄に存在する勃起/射精専用回路(性機能センター)を活性化させ、オスの交尾行動を促進させることを明らかにしました。これらの研究成果は、日本時間10月30日0:00(米国東部時間10月29日11:00)、米国のCell Pressより発行されている科学雑誌「Current Biology(カレントバイオロジー)」に掲載されます。

これまで脊髄の性機能センターが脳からどのようにコントロールされているのかはわかっていませんでした。今回、間脳視床下部に存在するオキシトシン・ニューロンが、脳から遠く離れた脊髄まではたらきかけ、脊髄レベルでオスの交尾行動を促進させることを明らかにしました。さらに、この脊髄におけるオキシトシンの作用は、いわゆるシナプス結合を介した‘配線伝達’ではなく、オキシトシンによる新たな局所神経機構‘ボリューム伝達’ を介したものであることも明らかにしました。この新たな脊髄内局所神経機構は、Wi-Fiとシステムが似ており、シナプスによる‘配線伝達’を‘Ethernet’と喩えるならば、‘ボリューム伝達’は‘Wi-Fi’と喩えることができるかもしれません。

本研究成果により、オスの性機能専用の脳-脊髄神経回路とその調節メカニズムが明らかとなり、今後、心因性の性機能障害の治療法の開発に寄与できることが期待されます。

遺伝研の貢献
ex vivo免疫電子顕微鏡解析、実験動物への薬物微量投与、および行動解析に貢献しました。

Figure1

図: 作用部位まで軸索突起をのばし、脳から遠く離れた脊髄で局所的に放出・拡散されることによってコミュニケーションする新たな脊髄内局所神経機構‘ボリューム伝達’を明らかにしました。ボリューム伝達は、配線伝達(シナプス系)と神経内分泌系の2つの要素をあわせ持っていると考えられます。ホルモンによる神経内分泌は、血流を介して全身に作用するシステムで、いわば‘BS(Broadcasting Satellite)放送’のようなものです。シナプスによる‘配線伝達’を‘Ethernet’と喩えるならば、‘ボリューム伝達’は、‘Wi-Fi’と喩えることができるかもしれません。

生物化学工学
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