2021-03-15 東京大学,日本医療研究開発機構,科学技術振興機構
ポイント
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病徴の1つとして、インターフェロン応答が顕著に抑制されていることが報告されているが、そのメカニズムは不明であった。
- 本研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が持つたんぱく質の1つORF3bに強いインターフェロン抑制活性効果があることを見いだしているが、今回新たにORF6にも、強いインターフェロン抑制活性効果があることを見いだした。
- 現在流行中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の配列を網羅的に解析した結果、インターフェロン抑制活性を欠失したと考えられるORF6の欠損変異体が散発的に出現していることを明らかにした。
東京大学 医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野の佐藤 佳 准教授らは、ウイルス感染に対する免疫応答の中枢を担うインターフェロンの産生を抑制する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のたんぱく質ORF6を発見しました。
SARS-CoV-2 ORF6たんぱく質のインターフェロン抑制活性は、2002~2003年に世界各国で流行したSARSウイルス(SARS-CoV)のORF6よりも強いことから、ORF6たんぱく質の機能が、COVID-19に特徴的な病態と関連している可能性が考えられます。また、現在全世界で流行しているウイルスの配列を網羅的に解析した結果、インターフェロン抑制効果を欠失したと考えられるORF6の欠損変異体が散発的に出現していることを見いだしました。
本研究成果は、2021年3月15日までに英国科学雑誌「Cell Reports」のオンライン版で公開されました。
本研究は、佐藤 佳 准教授に対する日本医療研究開発機構(AMED) 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(19fk0108171、20fk0108270、20fk0108413)、科学技術振興機構(JST) 国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)(JPMJJR20079)、科学技術振興機構(JST) SICORP e-ASIA 共同研究プログラム(JPMJSC20U1)、新学術領域研究「ネオウイルス学」(16H06429、16K21723、17H05813、19H04826)、科学研究費補助金 基盤研究B(18H02662)などの支援の下で実施されました。
- “Sarbecovirus ORF6 proteins hamper the induction of interferon signaling”
- DOI:10.1016/j.celrep.2021.108916
<研究に関すること>
佐藤 佳(サトウ ケイ)
東京大学 医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野 准教授
科学技術振興機構 国際部
<報道担当>
東京大学 医科学研究所 国際学術連携室(広報)
科学技術振興機構 広報課