もっと大きなウサギがいないのはなぜ
2021-03-16 京都大学
富谷進 霊長類研究所特定助教らの研究グループは、ウサギ目の化石種と現生種の体サイズを環境要因と対比しながら時間と空間を通して分析することで、ウサギ目の大型化が他の草食哺乳類分類群によって抑制されてきたことを明らかにしました。また、主な抑制者となる分類群が、気候変動に伴った草原の拡大などの、大規模な環境の変化と共に交代していたことも判明しました。
ウサギのなかまは現在92種ほど知られていて、ウサギ目という分類群を形成します。南極以外の全ての大陸に分布し、草食哺乳類として世界の多くの地域の生態系で重要な役割を果たしています。しかし、その身近さとは対照的に、ウサギ目の多様性は種数、形態、生態など様々な面で意外なほどに限られています。例えば、現生種で最大の野生のウサギの平均体重は約5キロで、カピバラなど大型のげっ歯目(ネズミのなかま)や、ほとんどの偶蹄目(シカやウシのなかま)の体重には遠く及びません。
本研究成果は、生物多様性の形成過程において、生物間の相互作用の影響を重視する「赤の女王仮説」と、非生物的環境要因を重視する「宮廷道化師仮説」を統合した新たな知見を提供する発見となりました。
本研究成果は、2021年3月12日に、国際学術誌「Evolution」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究のイメージ図(イラスト:Adrienne Stroup (used with permission))
研究者情報
研究者名:富谷進