2021-08-23 京都大学
益田玲爾 フィールド科学教育研究センター教授、尾形瑞紀 同修士課程学生(研究当時)、山下洋 名誉教授、張野宏也 神戸女学院大学教授、坂田雅之 神戸大学学術研究員、源利文 同教授、畠山信 NPO法人森は海の恋人副理事長、横山勝英 東京都立大学教授の研究グループは、2011年東北地方太平洋沖地震の際に発生した津波の後の生物群集の変遷を、気仙沼の舞根湾をフィールドに調査してきました。津波の後、クラゲが大量に発生したことは潜水目視観察でわかっていましたが、それ以前の定量的な情報はありません。
そこで、堆積物の環境DNAに注目しました。まず、本学舞鶴水産実験所で水槽実験を行い、堆積物には魚のDNAが1年間にわたり保存されることを確認しました。続いて、津波から6年後の気仙沼舞根湾において、堆積物のコアサンプル(柱状の試料)を採取し、これを層別に分析しました。その結果、石油由来の芳香族炭化水素を多く含む層の直上で、クラゲのDNAの含有量が最大となることが確認できました。気仙沼では、津波の際に多量の石油が流出しています。これもふまえると、津波による一時的な環境劣化で、クラゲの大発生が起きていたことがわかります。本研究は、堆積物の環境DNAが数年前の環境イベントを定量的に調べる上で有用であることを示した初めての試みです。
本研究成果は、2021年8月20日に、国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。
図:堆積物のコアサンプルを層別に分析し、津波を表すサインの直上でクラゲの環境DNAが最大となった
研究者情報
研究者名:益田玲爾