急性期脳梗塞の新たな血栓溶解薬開発に向けて臨床試験を開始:国循、杏林大学など国内15施設共同のT-FLAVOR試験

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2021-09-14 国立循環器病研究センター,杏林大学

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の豊田一則副院長と杏林大学(東京都三鷹市)医学部脳卒中医学教室の平野照之教授を共同研究開発代表者とする研究グループは、急性期脳梗塞の新たな血栓溶解薬テネクテプラーゼの国内での臨床応用を目指した、医師主導の多施設共同無作為化比較試験 Tenecteplase versus alteplase For LArge Vessel Occlusion Recanalization (T-FLAVOR)の開始準備を進めてきました。この試験に関する治療技術の先進医療B告示が8月31日の官報に掲示され、テネクテプラーゼの安全性を確認する第一段階の患者登録が9月に国循で始まります。

わが国における脳梗塞血栓溶解療法の現状

遺伝子組換え組織プラスミノゲンアクチベータ(tPA、いわゆるティーピーエー)を用いた「静注血栓溶解療法」は、この治療に引き続いて行われることも多いカテーテル治療としての「機械的血栓回収療法」とともに、高い後遺症軽減効果を有する急性期脳梗塞の標準治療です。血栓溶解薬として世界中で長年にわたり、アルテプラーゼと呼ばれる薬剤のみが用いられてきましたが、治療効果には限界があり、新たな血栓溶解薬の開発が世界中で試みられてきました。近年では、遺伝子組み換え技術を用いてアルテプラーゼを改変して作られた「テネクテプラーゼ」の脳梗塞治療効果が注目されるようになりました。
テネクテプラーゼは急性心筋梗塞治療薬として海外で商品化されていた薬ですが、発症後早期の脳梗塞患者に静注投与することで、アルテプラーゼと同等以上の有効性と安全性を示すことが海外の複数の臨床試験で示され、豪州や欧米の治療ガイドラインでも一定の推奨を得るようになりました。一方わが国においては、テネクテプラーゼを取り扱う製薬企業がなく、この薬剤自体が国内に存在しない状態が続いています。
日本脳卒中学会は血栓溶解薬プロジェクトチーム(平野照之座長)を設けて、テネクテプラーゼが国内で脳梗塞患者に用いられるようにこの数年来関係各部署に働きかけてきましたが、目立った進展を得ませんでした。その主因の一つに、日本人患者に同薬を用いた臨床情報が皆無であることが挙げられます。

T-FLAVOR試験企画の経緯

このような閉塞状態を打開するために、豊田副院長と平野教授を中心とするグループは国内独自のテネクテプラーゼ開発試験を企画し、日本医療研究開発機構(AMED)から2020~2023年度の4年間の研究助成を受けました。テネクテプラーゼは国内未承認の薬剤で、今回厚生労働省から先進医療Bとして承認され、はじめて試験を行うことが出来ます。
この試験は国内15施設が共同で行い(表1)、中央事務局、中央薬局、データセンターなどを国循が務めます。テネクテプラーゼは東アジアを含む海外諸国で心筋梗塞患者や脳梗塞患者への安全性が確かめられていますが、日本人への使用は初めてとなるので、先ず国循のみで少数例の脳梗塞患者にテネクテプラーゼを投与し、その安全性を確認した後に本試験に進みます。本試験の対象は、静注血栓溶解療法に続けて機械的血栓回収療法まで行うことが適切と判断された、発症4.5時間以内に血栓溶解薬を投与開始できる、脳主幹動脈の閉塞を伴った脳梗塞患者です。220例の患者を1:1に無作為に、テネクテプラーゼを投与する群と既承認薬アルテプラーゼを投与する群とに割り付けます。主要評価項目は、血栓溶解薬投与後早期に行われるカテーテル血管造影での、閉塞した脳動脈の有効再開通率です。他に、90日後の患者自立度や死亡率、早期の症候性頭蓋内出血など、多くの項目を評価します(図1)。
試験の概要は、臨床研究実施計画・研究概要公開システム(jRCTs051210055)にて公開されています。

T-FLAVOR試験の意義

本試験は厚生労働省や日本脳卒中学会とも引き続き連携を取りながら一歩ずつ準備を進め、長年の懸案事項が少しずつ解決する兆しが見えました。わが国は四半世紀前にアルテプラーゼが海外で次々に脳梗塞治療薬として承認された際にも、国内承認が大きく遅れて当時の脳卒中治療に深刻な影響を受けた、苦い経験があります。同じ轍を踏まぬよう、関連学会や参加施設で一丸となって、テネクテプラーゼの早期承認に向けた研究開発を進めてまいります。

謝辞

T-FLAVOR試験は、AMED臨床研究・治験推進研究事業助成(JP21lk0201109)、国立循環器病研究センター循環器病研究開発費(21-4-2)などの支援を受けて、遂行されます。
国循は本試験の中央調整施設として、脳血管内科・脳神経内科をはじめとする関連診療科、臨床研究推進センター、薬剤部などが国内試験運営を支えます。

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