PD-1阻害剤によるがん免疫治療法の効果を高めるミトコンドリア活性化剤

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2021-09-14 京都大学

京都大学アイセムス(物質-細胞統合システム拠点)のガネシュ・パンディアン・ナマシヴァヤム(Ganesh Pandian Namasivayam)講師、杉山弘(すぎやま・ひろし)連携主任研究者(兼 理学研究科 教授)らの研究グループは、がん細胞を攻撃するT細胞内に独自に開発した化合物EnPGC-1を送り込み、T細胞内のミトコンドリア活性を高め、さらにはT細胞の数を増やすことでマウスの腫瘍に対する攻撃性を高めることに成功ました。


T細胞はがん細胞の細胞表面にある受容体を標的にして攻撃する一方で、がん細胞はこのT細胞を不活性化する分子「PD-L1」を発現しています。この「PD-L1」が、「PD-1」と呼ばれるT細胞表面の受容体に結合することで、免疫抑制が起こりますが、この結合を阻止するオブジーボなどの治療薬は、がん治療に革命をもたらしました。しかし、がん患者の半数以上で、このがん免疫療法がうまく効かないという課題もあります。原因の一つとして、がん細胞と戦うT細胞内に、エネルギーを供給するミトコンドリアの数が不足している上に、T細胞自体の数が不足していることが挙げられます。
そこで、本研究グループはT細胞のミトコンドリア産生を活性化することによりPD-1阻害剤を用いたがん免疫療法の効果を高めることを目指し、PGC-1というミトコンドリアの生合成と代謝に不可欠な遺伝子を標的に研究を進めることにしました。まず、PGC-1を活性化する特定のDNA配列に選択的に結合することのできるピロールイミダゾールポリアミド(PIP)をスクリーニングにより選び、それに遺伝子を活性化するための酵素をリクルートする残基を付加して、これを「EnPGC-1」と名付けました。
EnPGC-1を作用させたマウスでは、T細胞内のミトコンドリアが活性化することでT細胞の数を増え、その寿命を伸ばすことに成功しました。また、腫瘍をもつマウスにEnPGC-1とPD-1阻害を組み合わせた免疫療法を施すと、マウスにおける抗腫瘍免疫が強まり、生存率が向上しました。
PGC-1シグナルは、ミトコンドリアによるエネルギー代謝に不可欠であり、これを活性化するEn-PGC-1は、2型糖尿病や高脂血症などの他の疾患の治療薬開発に役立つ可能性があります。今後は、目的の細胞以外のDNAに作用することを防ぐため、EnPGC-1をT細胞だけに送り込む方法の開発を進める予定です。
本研究成果は、2021年9月14日(日本時間)に米国の科学誌「Cell Chemical Biology」オンライン版で公開されました。

新しい化合物「EnPGC-1」は、マウスT細胞のミトコンドリアを活性化させ、マウスモデルのがん免疫療法の効率を上げることができた。(©高宮ミンディ/京都大学アイセムス)

詳しい研究成果

書誌情報

論文タイトル:“Targeted Epigenetic Induction of Mitochondrial Biogenesis Enhances Antitumor Immunity in Mouse Model”
(参考訳:ミトコンドリア生合成の配列選択的エピジェネティック誘導によりマウスモデルにおける抗腫瘍免疫が高まる)
著者:Madhu Malinee, Ganesh Namasivayam Pandian and Hiroshi Sugiyama

Cell Chemical Biology|DOI: 10.1016/j.chembiol.2021.08.001

 

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