2021-09-16 名古屋大学,東京大学,大阪大学,東京医科大学,科学技術振興機構
ポイント
- Extracellular vesicles(EV;直径30~2000ナノメートル)には、がんや病気に関連するmiRNAやたんぱく質が含まれるため、がんや病気のバイオマーカーとして利用が期待されている。
- 酸化亜鉛ナノワイヤの正電荷表面を使ってEVの電荷に基づく捕捉を達成し、EVの膜たんぱく質であるCD9、CD63、CD81、CD147の検出を達成した。
- また、大腸がん細胞由来のEVから得られた膜たんぱく質の発現量比(CD147/CD9)が、健康なボランティアの尿サンプルのEVから得られた膜たんぱく質の発現量比(CD147/CD9)と異なることを見いだした。
東海国立大学機構 名古屋大学 大学院工学研究科の安井 隆雄 准教授・馬場 嘉信 教授らの研究グループは、東京大学 大学院工学系研究科の柳田 剛 教授・長島 一樹 准教授、東京医科大学 医学総合研究所の落谷 孝広 教授、大阪大学 産業科学研究所の川合 知二 招へい教授との共同で、細胞外小胞(Extracellular vesicles:以下EV)の新しい捕捉方法を開発し、当該方法で捕捉するEVのmiRNA(マイクロRNA)や膜たんぱく質の発現量が、がん診断の新しい指標として利用可能であることを発見しました。
疾病のバイオマーカーとして注目されているEVは、由来する細胞によって内包物や大きさ、発現する膜たんぱく質の種類、脂質2重膜の組成が異なる不均一な集団です。本研究では、EV表面の分子組成と電荷の相関性に着目したEV捕捉法を考案し、捕捉されるEVをバイオマーカーとして活用する方法を開発しました。EV捕捉には、剣山のように配置したナノスケールの棒(ナノワイヤ)を用いました。その結果、表面が正に帯電するナノワイヤのEV捕捉性能が最も優れていることを見いだしました。また、この方法で捕捉したEVにおいて、特定の2種類の膜たんぱく質の発現量比を調べたところ、がん細胞由来のEVと正常細胞由来のEVで発現量比が異なることが明らかとなりました。当該方法により捕捉するEV電荷とmiRNAやたんぱく質情報の相関解析を進展させることで、がんの早期検知が可能になると期待されます。
本研究成果は、2021年9月16日付オランダの出版社エルゼビアの学術雑誌「Biosensors and Bioelectronics」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)「生体における微粒子の機能と制御」研究領域(研究総括:中野 明彦)における研究課題「細胞外小胞の網羅的捕捉と機械的解析によるmiRNA分泌経路の解明」(研究者:安井 隆雄)、日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究S「堅牢な分子識別センサエレクトロニクスの学術基盤創成」(代表者:柳田 剛)、日本学術振興会 科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型) 分子夾雑の生命化学「分子夾雑化学」(代表者:浜地 格、実施代表者:馬場 嘉信)の一環として行われました。
<論文タイトル>
- “Molecular profiling of extracellular vesicles via charge-based capture using oxide nanowire microfluidics”
- DOI:10.1016/j.bios.2021.113589
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
安井 隆雄(ヤスイ タカオ)
東海国立大学機構 名古屋大学 大学院工学研究科 准教授
柳田 剛(ヤナギダ タケシ)
東京大学 大学院工学系研究科 教授
川合 知二(カワイ トモジ)
大阪大学 産業科学研究所 招へい教授
落谷 孝広(オチヤ タカヒロ)
東京医科大学 医学総合研究所 分子細胞治療研究部門 教授
<JST事業に関すること>
保田 睦子(ヤスダ ムツコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ライフイノベーショングループ
<報道担当>
東海国立大学機構 名古屋大学 管理部 総務課 広報室
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
大阪大学 産業科学研究所 広報室
東京医科大学 企画部広報・社会連携推進室
科学技術振興機構 広報課