世界初、「免罪符型」健康食品CMが「不健康な行動をしても良い」と誤った認識を誘発することを実証

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2022-02-14 東京大学

健康食品は、乱れた食事や運動不足を簡単に解消する魔法の方法ではない。例えば、からあげ1つで約60kcalだが、その摂取を帳消しにする健康食品はない。

健康食品を不健康な行動をとるための免罪符として描く「免罪符型」の広告は、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を視聴者にもたらす可能性がある。そこで、東京大学大学院医学系研究科の家れい奈大学院生、奥原剛准教授、木内貴弘教授らは、健康食品の「免罪符型」広告が、視聴者に及ぼす影響を評価することを目的としてランダム化比較研究を実施した。その結果、「免罪符型」の健康食品の動画広告の閲覧によって、視聴者の「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識が強まることが実証された。

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1.発表者:
家 れい奈(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻 専門職学位課程 2年)
奥原 剛(東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野 准教授)
木内 貴弘(東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野 教授)

2.発表のポイント:
◆健康食品を不健康な行動をとるための免罪符として描く、免罪符型の動画広告が視聴者の認識に与える影響を、公衆衛生の観点から世界で初めて評価した。
◆免罪符型の広告が、視聴者の「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を高めていることを明らかにした。
◆免罪符型広告の内容改善の重要性が示唆された。

3.発表概要:
健康食品は、乱れた食事や運動不足を簡単に解消する魔法の方法ではない。例えば、からあげ1つで約60kcal だが、その摂取を帳消しにする健康食品はない。
健康食品を不健康な行動をとるための免罪符として描く「免罪符型」の広告は、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を視聴者にもたらす可能性がある。そこで、東京大学大学院医学系研究科の家れい奈大学院生、奥原剛准教授、木内貴弘教授らは、健康食品の「免罪符型」広告が、視聴者に及ぼす影響を評価することを目的としてランダム化比較研究を実施した。その結果、「免罪符型」の健康食品の動画広告の閲覧によって、視聴者の「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識が強まることが実証された。

4.発表内容:
【背景】
公衆衛生のいくつかの研究では、健康食品の有効性は極めて限定的であると言われている。健康食品を摂取するかどうかに関わらず、食生活・生活習慣の実行は重要であり、健康食品は乱れた食事や運動不足を簡単に解消する魔法の方法ではない。民間の調査では、特に「脂肪」への効果を訴求する健康食品への関心が高いことが分かっている。また、近年の通信環境の発展に伴い、動画広告に接する機会が増えている。
東京大学大学院医学系研究科の研究グループは、日本の「脂肪」への効果を訴求する健康食品の動画広告に、「どのような」内容が「どれくらい」あるのかを類型化する内容分析を実施した。その結果、「免罪符型」と名付けられる広告が、分析対象の広告の約 25%を占め最も多いことが分かった。「免罪符型」の広告では、健康食品を、脂質の多い食品を摂取するための「免罪符」かのように描いており、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を視聴者にもたらす可能性がある。そこで、「脂肪」への効果を訴求する健康食品の「免罪符型」動画広告が、視聴者の認識に与える影響を評価することを目的としてランダム化比較研究を実施した。

【方法】
調査会社の登録モニター788人を対象に、インターネット調査を実施した。参加者を、介入群または対照群にランダムに割り付けた。介入群に割り付けられた参加者394名は、以前の研究で「免罪符型」と特定した動画広告のうち、再生回数が多い3本の動画を閲覧した。対照群に割り付けられた参加者394名は、健康食品とは無関係のお茶の抽出方法に関する動画を閲覧した。「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識に関する質問9問について、参加者に「非常にそう思う」から「全くそう思わない」までの6段階で動画の閲覧前後に尋ね、平均値を算出した。動画を閲覧した後の認識の平均値を介入群と対照群で比較した。(閲覧前の値を共変量として調整した共分散分析)

【結果】
「免罪符型」の動画を閲覧した介入群は、お茶の動画を閲覧した対照群と比較して、統計学的有意に強く「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」と認識した(p<0.001)。

【結論】
「免罪符型」の健康食品の動画広告は、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を高めた。

【社会的意義と示唆】
本研究では、日本の健康食品の広告が視聴者の認識に与える影響を公衆衛生の観点で初めて明らかにした。健康食品を、不健康な行動をとるための免罪符かのように描く「免罪符型」の動画広告は、特定の文言で「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」と訴求しているわけではない。しかし、動画広告内のストーリーや登場人物の表情などを通じ、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を高めることが示された。「免罪符型」の広告が、もし、日常的に不健康行動も誘発しているとなれば、不健康行動による害の方が大きいだろう。健康食品の動画広告の内容を改善する重要性が示唆された。

5.発表雑誌:
雑誌名:「Healthcare」(2022 年 2 月 11 日掲載)
論文タイトル:The Effect of Exposure to “Exemption” Video Advertisements for Functional Foods: A Randomized Control Study in Japan
著者:Reina Iye*, Tsuyoshi Okuhara, Hiroko Okada, Eiko Goto, Emi Furukawa, Takahiro Kiuchi

6.問い合わせ先:
東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻
専門職学位課程 家 れい奈 (いえ れいな)
東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 医療コミュニケーション学
准教授 奥原 剛(おくはら つよし)

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