2022-02-21 京都大学
私たちの周りには、冬に葉を落とす木(落葉樹)と落とさない木(常緑樹)がいます。両者は全く違う生き方ですが、どうして同じ環境に共に生きられるのでしょうか。
小野田雄介 農学研究科准教授、葉雲翰 同修士課程学生、北山兼弘 同教授のグループは、同所的に自生している落葉樹と常緑樹の葉における炭素の収支バランスを詳細に研究しました。常緑樹は冬の凍結に備えて、頑丈な葉を作るために、落葉樹よりも約2倍の炭素を必要とします。一方で、その投資は長期間の光合成によって補われ、炭素の費用対効果は、落葉樹でも常緑樹でも同程度でした。冬を避けるか耐えるかが、落葉樹と常緑樹の違いですが、炭素の収支バランスは同程度で、それがゆえに共存できるようです。
温暖化に伴い、落葉樹が多い地域に、常緑樹が近年増えてきました。冬の寒さの緩和により、常緑樹は葉を頑丈にする必要性が減り(コスト軽減)、また光合成ができる期間が伸びるため、大きなプラスになります。植物の葉の費用対効果を明らかにすることにより、温暖化に伴う種の分布変化の理解や予測にも繋がります。
本研究成果(未校閲の受理原稿)は、2022年2月8日に、国際学術誌「New Phytologist」にオンライン掲載されました。最終校閲版は2月24日にオンライン掲載される予定です。
図:落葉樹と常緑樹の一例
近縁な種にも落葉タイプと常緑タイプの両方が存在します。たとえば、サクラ属と言えば、落葉樹という印象があるかもしれませんが、常緑樹もいます。落葉樹は秋に紅葉しますが、常緑樹は青々したままです。( 2021年11月16日京都市吉田山にて。撮影:小野田雄介)
研究者情報
研究者名:小野田雄介
研究者名:北山兼弘