2022-06-16 京都大学
がんは身体にさまざまな異常(体重減少や代謝異常など)をひきおこします。その根幹は、がんが離れた位置にある宿主臓器や細胞に作用できる、ということにあります。この作用は極めて複雑で、その実態やメカニズムに関する私たちの理解は限定的です。
河岡慎平 医生物学研究所特定准教授(東北大学准教授を兼務)の研究グループは、東京大学、九州大学、東北大学の研究チームとの共同研究により、がんが、離れた位置にある肝臓でニコチンアミドメチル基転移酵素(NNMT)の発現量を増加させ、このことによって多様な代謝異常をひきおこしていることを見出しました。NNMTを欠失させたマウスではがんによる肝臓の異常の一部が緩和され、全身性の不調も部分的に抑制されていました。本研究により、がんが身体に不調をもたらすしくみの一端が明らかとなりました。本成果ががんに起因する不調の全体像を理解する一助となり、また、不調を強力に抑えこむ方法論の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2022年6月15日に、学術誌「Nature Communications」に掲載されました。
図:ニコチンアミドメチル基転移酵素(NNMT)の性質
研究者情報
研究者名:河岡 慎平