2022-07-01 京都大学
山根久代 農学研究科准教授、Wenxing Chen 同博士課程学生(研究当時:華中農業大学交換留学生、現:華中農業大学ポスドク)、松下美和子 同修士課程学生(研究当時)、玉田洋介 宇都宮大学准教授の研究グループは、主要果樹であるリンゴ花芽の休眠と発芽において、ヒストンタンパク質の化学的修飾のひとつであるH3K4me3が重要な役割を果たしていることを発見しました。
本研究ではクロマチン免疫沈降法と次世代シークエンサーを組み合わせた技術であるChIP-seq解析とRNA-seq解析を組み合わせて、休眠から発芽における遺伝子発現のグローバルな変化とヒストン修飾レベルの変化を調べました。その結果、すでに発見していた休眠制御因子からなる休眠制御の中心経路にH3K4me3が寄与することを発見しました。
地球温暖化はすでに果樹の休眠や開花に影響を及ぼしていますが、本研究成果は、このまま地球温暖化が進行したとしてもその環境に適応できる新たな果樹栽培技術の確立や育種につながることが期待されます。
本研究成果は、2022年6月14日に、国際学術誌「The Plant Journal」にオンライン掲載されました。
リンゴが季節に応答して休眠から発芽・開花へ移行する過程におけるH3K4me3ヒストン修飾の寄与の概略図
研究者のコメント
「休眠制御候補転写因子DAMを発見して以来その役割について研究を進めてきましたが、休眠芽においてDAMがヒストン修飾を介して標的遺伝子群の転写制御に関与することを示唆する成果を得ることができました。この考えは仮説の段階で、立証するにはさらなる研究が必要です。果樹生産において開花の人為制御は喫緊の課題ですが、木本植物の休眠と開花に関しての基礎的知見は限られています。今回の発見を礎に、これからも地道に研究を続けていきたいと考えています。」(山根久代)
研究者情報
研究者名:山根 久代