膨大なオミックス情報解析研究~ウイルス感受性や COVID 19 合併症の個人差の根底に腸内環境の違いが関与の可能性~
2022-10-11 東京医科大学
東京医科大学(学長:林由起子/東京都新宿区)消化器内視鏡学分野の永田尚義 准教授と河合隆 主任教授 、国立国際医療研究センター(理事長:國土典宏 東京都新宿区)国際感染症センターの石金正裕 医師、木下典子 医師 、大曲貴夫 センター長、産学連携推進部の木村基 部長、感染病態研究部の杉山真也 テニュアトラック 部長、杉山温人 センター病院長、ゲノム医化学プロジェクトの溝上雅史プロジェクト長、上村直実 国府台病院名誉院長、江崎グリコ株式会社基礎研究室の青木亮 研究員、西嶋智彦 チーフ、井ノ岡博 室長、理化学研究所(理事長:五神 真 埼玉県和光市)生命医科学研究センターの増岡弘晃特別研究員、竹内直志 特別研究員(研究当時、須田亙 副チームリーダー、大野博司 チームリーダーらの研究グループは、新型コロナウイルス感染症患者と非感染者の患者の糞便中のマイクロバイオームとメタボローム、血液中のサイトカインを網羅的に解析し、以下の知見を得ました。本研究成果は「 Gastroenterology 」 ( 33.883 ) のオンライン版に掲載されました(現地時間 2022 年 9 月 24 日公開)。
【本研究のポイント】
- COVID-19やCOVID-19に伴う臓器合併症に特徴的な腸内細菌、腸内代謝物質、サイトカインの変化を同定しました。
- 「腸内の口腔由来細菌やアミノ酸と過剰な免疫応答との正の関係」や「腸内の短鎖脂肪酸産生菌、糖代謝物質、神経伝達物質と免疫応答との負の関係」など、特定の細菌種や代謝物質を介したユニークな免疫応答がCOVID-19に存在することを発見しました。
- 細菌や代謝物質を介した免疫応答はCOVID-19の肺合併症・重症者で最も顕著で、次いで凝固障害、腎障害、肝障害で、下痢では極端に少ないことを発見しました。
- コホート研究にて「個人が有する腸内細菌の割合や代謝物質の濃度がCOVID-19合併症の発症リスクに関係する」ことを証明しました。
- COVID-19で変動する菌種は、糖尿病、炎症性腸疾患、PPIとは異なり、関節リウマチとは類似することを発見しました。また、腸内細菌種を組み入れた機械学習法の判別モデルを用いることでCOVID-19とその重症者を高確率で予測することができました。
- COVID-19で変動する菌種は日本と香港で類似していましたが、アメリカとは異質であることを発見しました。
COVID-19患者やその合併症を有する患者ではユニークな腸内環境の変化がみられ、過剰な免疫応答と関わっていることを発見しました。同じ日本人でも新型コロナウイルスの感受性やCOVID-19に伴う合併症リスクの違いがあるのは、腸内環境の個人差が寄与しているかもしれません。腸内環境の個人差はワクチンの効果や副反応の個人差にも影響する可能性があり今後の研究が期待されます。