2023-01-25 東北大学,科学技術振興機構
ポイント
- 長い炭素鎖(炭素数12個)を導入したシアニン色素(TRC12)をエクソソーム脂質膜結合性ペプチド(ApoC)に連結した、高感度エクソソーム検出蛍光プローブ(ApoC-TRC12)を開発しました。
- プローブが自己会合し凝集体を形成し、標的エクソソームとの結合に伴い凝集体が解消される機構により、強い結合力と高い蛍光応答機能を発現しました。
- 簡便、迅速かつ高感度なエクソソーム解析への応用が期待できます。
エクソソームはほぼ全ての細胞が放出する細胞外小胞(直径50~150ナノメートル程度)で、細胞の恒常性維持やがんなどの疾患発症など多様な生命現象に深く関与しています。エクソソームの機能理解や医療応用に向けて、エクソソームの検出技術開発が必要不可欠です。
東北大学 大学院理学研究科 佐藤 雄介 准教授らの研究グループは、自己会合・解消機構に基づく新たなエクソソーム検出用蛍光プローブ(ApoC-TRC12)を開発することに成功しました。ApoC-TRC12単独では自己会合による凝集体形成により、その蛍光が著しく抑制されていますが、エクソソーム添加により凝集体が解消され、プローブがエクソソーム表面の脂質膜に強くかつ選択的に結合することで、明瞭な発蛍光応答を示します。ApoC-TRC12は標的エクソソームと混ぜて蛍光測定するだけという簡便な操作で迅速に高感度検出(検出限界~103個/マイクロリットル)が可能です。抗体を用いた既存のエクソソーム検出法では、検出原理上、解析対象は抗体が結合するマーカーたんぱく質が発現している種類のエクソソームに限定されますが、これに対して本プローブはエクソソーム脂質膜を結合場とするため、表面のたんぱく質発現プロファイルに影響を受けず、さまざまな細胞由来のエクソソームの解析に適用できます。今後、本研究成果はエクソソーム研究の基礎と応用を推進する基盤技術の開拓に貢献するものと期待されます。
本研究成果は、2023年1月25日(米国東部時間)にアメリカ化学会(ACS)が出版する「ACS Sensors」誌に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)「蛍光プローブの結合反応に基づくエクソソーム性質解析」(JPMJPR19H4)(研究代表者:佐藤 雄介)の支援を受けて行われました。
<論文タイトル>
- “Self-assembly and disassembly of membrane curvature-sensing peptide-based deep-red fluorescent probe for highly sensitive sensing of exosomes”
- DOI:10.1021/acssensors.2c02498
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
佐藤 雄介(サトウ ユウスケ)
東北大学 大学院理学研究科 化学専攻 准教授
<JST事業に関すること>
保田 睦子(ヤスダ ムツコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ライフイノベーショングループ
<報道担当>
東北大学 大学院理学研究科 広報・アウトリーチ支援室
科学技術振興機構 広報課