マウス個体でタンパク質を分解する新規デグロン系統を開発

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2024-10-28 国立遺伝学研究所

これまで、生体における遺伝子の機能解析には、遺伝子を欠損させたノックアウトマウスが使われてきました。しかし、生体で機能しているのは遺伝子ではなく、その産物であるタンパク質です。したがって、遺伝子の機能を知るには、タンパク質を直接分解してその影響を調べることが有効です。

今回、国立遺伝学研究所の旧発生工学研究室の相賀らは、分子細胞工学研究室の鐘巻らが開発したオーキシンデグロンシステムを汎用性の高いRosa26遺伝子座に導入したマウスを作成しました。Rosa-CAG-TIR1-Flagはタンパク分解誘導因子TIR1をノックインしたマウスでオーキシンアナログを投与すると、全身で、数時間以内にタンパク質の分解を誘導できます。また、Rosa-CAG-AID-mCherryはTIR1の活性を蛍光たんぱく質で評価できるレポーターマウスです。一方、組織、細胞特異的にタンパク質を分解するには、組織特異的系統が必要です。研究グループは、今回、精子・卵子のもとになる生殖細胞特異的にタンパク質を分解誘導できるマウス系統(Oct-dPE-TIR1-Flag) の開発にも成功しました(図参照)。

また実際に内在性のタンパク質の分解に有効であることを証明するため、RNAの分解因子であるDCP2にデグロンタグを導入したノックインマウス(AID-DCP2)を作成し、分解誘導したところ、24時間以内にDCP2-欠損マウス同様の表現型を誘導することに成功しました。これらの系統は、生体で機能する多くのタンパク質の機能解析に非常に有用です。

本研究は、国立遺伝学研究所 旧発生工学研究室の相賀裕美子名誉教授、安島理恵子助教(当時)、伊藤初音及び大久保明美技術補佐員、ゲノム変異マウス開発支援部門の山谷宜子及び木曽誠技術職員、分子細胞工学研究室の鐘巻将人教授の研究グループにより実施されました。

本研究は、科研費JP17H06166, JP21H04719, JP22H04703, AMED NBRP 基盤技術整備プログラム、及びJST CREST JPMJCR21E6の支援を受けました。

マウス個体でタンパク質を分解する新規デグロン系統を開発
図:全身にデグロンタグ付きのmCherryを発現するレポーターマウスと生殖細胞特異的にタンパク分解誘導因子TIR1を発現するマウスを交配し、妊娠14日目にオーキシンアナログを注射し、翌日に胎児精巣を、解析した。TIR1を持たないマウス(上段)はすべての細胞がmCherryを発現しているが、TIR1を持つマウス(下段)では生殖細胞特異的にTIR1が発現しており、その細胞はmCherry の発現を完全に消失している。CDH(緑)は生殖細胞のマーカー。


Establishment and characterization of mouse lines useful for endogenous protein degradation via an improved auxin-inducible degron system (AID2).

Makino-Itou H, Yamatani N, Okubo A, Kiso M, Ajima R, Kanemaki MT, Saga Y.

Development, Growth and Differentiation (2024) Sep;66(7):384-393. DOI:10.1111/dgd.12942

細胞遺伝子工学
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