がん細胞の接着を回復させる機構-アクトミオシン収縮による細胞境界面の張力が誘導-

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2017-12-6 理化学研究所

理化学研究所(理研)多細胞システム形成研究センター高次構造形成研究チームの竹市雅俊チームリーダー、伊藤祥子研究員と環境資源科学研究センター創薬シード化合物探索基盤ユニットの大貫哲男副基盤ユニットリーダーらの共同研究グループは、大腸がん由来細胞株の細胞間接着の形成を回復させる機構を明らかにしました。

正常な上皮組織[1]の細胞には極性[2]があり、頂端部側で強固に接着して組織の安定性を維持しています。がんが進行すると極性が失われるとともに、細胞間の接着構造が乱れていきます。がん由来の細胞株では、さまざまなタイプの接着異常が観察され、このような変化は、がんの浸潤性や転移能を高める恐れがあります。しかし、この異常を元に戻す治療法は現在のところありません。

今回、共同研究グループは、正常に接着できない大腸がん由来細胞を用いて、約16万種類の化合物の中から細胞の接着を回復させる薬剤を探しました。その結果、細胞骨格の一つである微小管[3]を壊す複数の薬剤に、接着構造を回復させる作用があることを発見しました。微小管重合阻害剤などの薬剤は、微小管の脱重合を介して、RhoA[4]という細胞内シグナルタンパク質を活性化し、次いで、アクチン[5]とミオシン[6]の複合体であるアクトミオシン[7]を細胞表層で収縮させました。この収縮は、細胞と細胞の境界面に「張力」として伝わり、張力に反応して別のアクチン制御タンパク質が細胞境界面に集まり、その結果、大腸がん細胞に、正常に近い接着構造が再形成されることが明らかになりました。

今後、生体における実際のがん細胞が、同様な異常と薬剤反応性を持つかどうかを検討し、さらなる接着回復剤を探索することにより、新たながんの治療法として貢献すると期待できます。

本研究は、国際科学雑誌『Nature Communications』(11月28日付け)に掲載されました。

がん細胞の接着を回復させる機構-アクトミオシン収縮による細胞境界面の張力が誘導-

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医療・健康
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