2020-08-26 京都大学
久保拓也 工学研究科准教授、大塚浩二 同教授、高谷光 化学研究所准教授、信和化工株式会社 小林宏資氏らの研究グループは、新たな抗体分離の基礎となる糖鎖分離の手法を開発しました。
バイオ医薬品や昨今のCOVID-19でも注目されている抗体は、我々の免疫機構を担う重要な成分です。抗体はタンパク質と糖鎖で構成されており、通常、そのタンパク質の違いのみで見分けられて分離・精製されています。しかし、抗体に含まれる糖鎖は、細胞認識や構造安定性などの重要な役割を担っているため、抗体の糖鎖の違いを見分ける技術は、次世代の抗体研究のカギとなると予想されます。
多くの過去の研究報告から、芳香環(ベンゼン環)に由来するπ電子と、糖鎖に含まれるCH、OHとは強く相互作用すると予想されていました。本研究は、π電子が豊富なフラーレンと糖鎖の間に働くπ相互作用の寄与を明らかにするとともに、世界で初めてフラーレンを用いた糖鎖の分離を実現しました。糖鎖構造を精密に見分ける基礎技術として、今後抗体等の糖タンパク質分離への応用が期待されます。
本研究成果は、2020年8月14日に、国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。
図:本研究のイメージ図
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41598-020-70904-3
【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/254106
Hiroshi Kobayashi, Kazuya Okada, Shinnosuke Tokuda, Eisuke Kanao, Yusuke Masuda, Toyohiro Naito, Hikaru Takaya, Mingdi Yan, Takuya Kubo & Koji Otsuka (2020). Separation of saccharides using fullerene-bonded silica monolithic columns via π interactions in liquid chromatography. Scientific Reports, 10:13850.