2021-11-19 京都大学
日本人に馴染みの深い淡水魚であるフナ※は、雄と雌で有性生殖をする通常の2倍体(有性フナ)と雌だけでクローン繁殖をする3倍体(クローンフナ、いわゆるギンブナ)が全国の河川や湖沼で共存しています。
三品達平 理学研究科博士課程大学院生(現・理化学研究所)、渡辺勝敏 同准教授、武島弘彦 東海大学海洋学部特定研究員、西田 睦 琉球大学学長、井口恵一朗 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科教授を中心とした国際共同研究グループは、雌だけで繁殖するフナの起源を明らかにし、またクローン繁殖であるにも関わらず、大きな遺伝的多様性をもつ理由を突き止めました。
本研究グループが日本全国やユーラシア大陸から採集されたフナの遺伝子を詳細に比較したところ、(1)日本のクローンフナはもともと大陸起源で、氷期に日本に侵入した可能性が高いこと、そして(2)クローンフナが稀に日本各地の有性フナと有性生殖し、新たな遺伝子を獲得しながら分布を拡大してきたことが明らかになりました。クローンが有性個体と生殖し、核やミトコンドリアの遺伝子をダイナミックに取り入れながら進化してきた証拠は脊椎動物では初めての発見です。これは「性のあり方」に対する生物観を変える新知見だともいえ、今後、生物において有性生殖がどのように進化してきたのかという大きな謎をひもとく一つの手がかりになると期待されます。
本成果は、2021年11月18日に国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されます。
※フナ:ここではゲンゴロウブナやヨーロッパブナを除くフナ類の総称
研究者情報
研究者名:渡辺勝敏