2022-08-10 京都大学
ヒトに肝炎をもたらす病原体ウィルスの特定やワクチン開発のため、過去にチンパンジーがモデル動物として使われていました。野生動物研究センター熊本サンクチュアリは、過去に医学研究に使われたチンパンジーが余生を安らかに暮らす場所です。平田聡 野生動物研究センター教授、クリスティン・ハーバーキャンプ 同研究員らのグループは、熊本サンクチュアリおよびその前身施設に飼育されていたチンパンジーたちの生存と死亡の記録を分析し、C型肝炎ウィルスの実験的感染を受けたチンパンジーの寿命を算出しました。
その結果、医学実験のためC型肝炎ウィルスが体に残ったチンパンジーは、そうでないチンパンジーに比べて早く亡くなることが分かりました。腎臓の病気が死因となった例が複数あり、また、肝機能も低下していることが確かめられました。1970年代から21世紀初頭にかけて、チンパンジーをモデル動物にした医学研究は世界的に多くおこなわれてきましたが、C型肝炎感染実験の影響を追跡し報告した研究はこれまでになく、本研究が世界初の報告となります。
本研究成果は、2022年8月10日に、国際学術誌「Biology Letters」にオンライン掲載されました。
熊本サンクチュアリに暮らすチンパンジー、キャンディー(女性、野生由来、推定1982年生まれ)
過去にC型肝炎感染実験の対象になり感染した。写真は別の医学研究施設から熊本サンクチュアリに引き取られて間もなく撮影したもの。
研究者のコメント
「C型肝炎感染チンパンジーの治療費獲得のためのクラウドファンディングを始める計画をしています。医療の進歩で良い治療薬が開発され、ヒトのC型肝炎は治療可能になりました。チンパンジーも治療可能なはずですが、治療薬が高価なため、経済的に負担が大きい状況です。皆様からご支援いただければ幸いです。」(平田聡)
研究者情報
研究者名:平田 聡
研究者名:ハーバーキャンプ クリスティン