CAR-T細胞の「原料の質」が治療効果と相関~細胞採取時のリンパ球数がCAR-T細胞の体内での増殖と治療効果を予測する~

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2022-11-22 京都大学

キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法は、従来の治療では効果が乏しい血液がんに対しても治療効果をもたらしうる治療として、近年急速に発展しています。CAR-T細胞療法では、T細胞と呼ばれるリンパ球を患者さんからアフェレーシスによって採取し、それを原料にCAR-T細胞を製造して患者さんに投与します。CAR-T細胞療法の治療効果は「疾患そのものの性質」と「CAR-T細胞の品質」双方の影響を受けるため、投与前あるいは投与後早期の時点では効果の予測が難しいのが現状です。特にCAR-T細胞の品質(投与後に体内で増えて、血液がん細胞を攻撃できるかどうか)を予見する指標はほとんど分かっていませんでした。

そこで、和田典也 医学部附属病院医員(現:医学研究科大学院生)、城友泰 同助教、新井康之 同助教と、髙折晃史 医学研究科教授、長尾美紀 同教授らの研究グループは、CAR-T細胞療法としてチサゲンレクルユーセル(tisa-cel)を京都大学病院で投与された悪性リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫:DLBCL)44症例を対象に、CAR-T細胞の「原料の質」の評価基準のひとつである「アフェレーシス時の末梢血リンパ球数」に着目し、CAR-T細胞投与後の体内での増殖と、治療効果への影響を解析しました。その結果、アフェレーシス時のCD3陽性T細胞数高値の群は、低値の群と比較して、CAR-T細胞投与後7日目時点での細胞の増殖がより顕著で、治療効果も良好であることが示されました。

今回の研究では、CAR-T細胞療法において、原料の質を意味するアフェレーシス時の末梢血CD3陽性T細胞数が、そこから製造されるCAR-T細胞の品質や治療効果と相関することが分かりました。このことは、アフェレーシス時の末梢血CD3陽性T細胞数がCAR-T細胞療法の効果を予測するバイオマーカーとなることを意味します。また、強力な抗がん剤治療を行う前に前もって細胞を採取しておく「先制的アフェレーシス」など、CAR-T細胞の品質を担保する治療戦略の必要性も示唆されました。

本研究成果は、2022年11月7日に、「Scientific Reports」誌にオンライン掲載されました。

研究者のコメント

「本研究は、せっかくCAR-T細胞療法を行っても、体内での増殖が悪く、治療効果が限定的である症例を複数経験し、このような症例を何とか前もって予測したいという、臨床現場からの切実な思いに立脚しています。CAR-T細胞療法の適応を考え、アフェレーシスを行い投与に至るまでに数か月の準備が必要ですが、本研究によってアフェレーシスという早い段階でその後の治療効果を予測できる可能性が示されました。多くの治療を重ね、リンパ球が疲れ果てた状態からCAR-T製造を試みるのではなく、もっと早い段階からCAR-T細胞療法を計画することの重要性も証明されたと考えています。京都大学病院では、新しい治療であるCAR-T細胞療法に関して、このような臨床の現場目線の解析(リアルワールドデータ解析)を順次進め、即座に臨床現場に還元することで、「細胞療法運用学」の発展を目指しています。」(和田典也、城友泰、新井康之)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:城 友泰
研究者名:新井 康之
研究者名:髙折 晃史
研究者名:長尾 美紀

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