眼底画像から性別を推定するAIを一般公開 ~性差のある疾患研究での活用に期待~

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2023-12-07 国立情報学研究所

公益財団法人 日本眼科学会(代表:大鹿哲郎、東京都千代田区)と大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NIIエヌアイアイ、所長:黒橋 禎夫、東京都千代田区)は、東京都千代田区)は、日本医療研究開発機構(AMED)の支援により構築された学会主導データベース「Japan Ocular Imaging Registry: JOIR」で収集された画像データを用いて、眼底画像から個人の性別を推定するAIを開発し、無償公開を開始しました。本成果を研究者が活用することにより、性別によって発症頻度に差がある疾患の病態を解き明かす一助になる可能性があります。

【背景】

深層学習(Deep Learning、DL)は機械学習におけるブレークスルーであり、特に画像認識の分野では人工知能(Artificial Intelligence、AI)の代名詞となるほど盛んに利用されています。そして、画像認識の精度は人間を上回るとの報告も増加しています。
NIIは2017年に医療ビッグデータ研究センター(Research Center for Medical Bigdata、RCMB)を設置し、医療画像ビッグデータのデータベースと機械学習の計算資源を併せ持った統合クラウド環境(クラウド基盤)を整備運用しています。クラウド基盤には、NIIの解析チームとして名古屋大学などの全国の医療画像解析の研究者が接続し、連携してさまざまな医療補助AIの研究開発を行っています。一方、日本眼科学会は、眼底画像を含む眼科データを全国の眼科関連施設から収集し、医療補助AIの研究開発を支援・促進する目的で、一般社団法人 Japan Ocular Imaging Registry(JOI Registry、JOIR)を2019年に設立しました。このJOIRのデータベースに収集した眼科画像を匿名化してNIIのクラウド基盤へ送り、クラウド基盤上の計算資源を利用して医療支援AIを研究開発しています。
近年、医療画像を用いたAI開発が急速に進み、病気の有無を判定するだけではなく、画像が撮影された個人の状態を推定することができることが明らかになってきました。眼内の光を感じる部分である網膜を撮影した眼底写真からは、年齢や性別、喫煙状況、血糖の状態などをAIで推定可能なことが明らかになっており、そこから得られる情報は眼科領域の疾患だけでなく、様々な全身の疾患を対象とした医学研究に活用できる可能性があります。しかし、これまでに報告された研究では、開発されたAIが公開されていないことから、他の研究に用いることができませんでした。
そこで、日本眼科学会はNIIと共同で、眼底画像をもとにその人の年齢を推定するAIを開発し、2023年1月に、そのAIモデル(推定手法)を広く研究者が自由に利用できるよう一般に無償公開しました。今回はその第2弾として、眼底画像から性別を推定するAIを開発し、無償公開することとしました。

【研究開発の概要】

今回研究開発したモデルは、性別のラベルが付与された17〜94歳の眼底写真131,031枚を学習データとし、性別を正解として深層学習を行いました。学習に当たっては、深層学習モデルの中でも一般的な16個のモデル(DenseNet-121/169/201, Inception-V3, Inception-ResNet-V2, MobileNet, MobileNetV2, Xception, EfficientNet-B0/B1/B2/B3/B4/B5/B6/B7)を用いました。
その結果、検証データの眼底画像から推定した性別が実際の性別と一致する精度は、最も高いモデルで92.0%(AUC 0.971)で、これまで他人種で行われた性別推定モデルと同等の結果でした(図1)。このうち、最も精度の高かったEfficientNet-B7と軽量かつ精度の高かったMobileNetの二つのモデルを公開します。

release_joir_202311_fig1.png
図1 今回開発した性別推定AIモデルの推定精度 (バー基底:モデルファイルのサイズ)

本成果を研究者が活用することにより、性別によって発症頻度に差がある疾患の病態を解き明かす一助になったり、また、研究等において性別の情報が欠落している場合にその情報を補完するために活用されたりする可能性があると考えられます。

【モデルの公開】

本モデルは、以下の、JOIRのウェブページよりダウンロード可能です。
http://www.joir.jp/data/index.html

【研究プロジェクトについて】

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED) 臨床研究等 ICT 基盤構築・人工知能実装研究事業「次世代眼科医療を目指す、ICT/人工知能を活用した画像等データベースの基盤構築」(課題番号:JP17lk1010024/研究代表者: 大鹿哲郎)および「医療ビッグデータ利活用を促進するクラウド基盤・AI 画像解析に関する研究」(課題番号:JP18lk1010028・JP19lk1010036/研究代表者: 合田憲人)の支援を受けました。モデルは森健策(NII RCMBセンター長・名古屋大学教授)と小田昌宏(名古屋大学准教授)が開発しました。

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