超解像顕微鏡が解き明かす染色体凝縮の仕組み ~コンデンシンが「DNAクリップ」として働く~

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2024-08-22 国立遺伝学研究所

細胞が分裂するためには、複製された長いゲノムDNAが分裂期染色体として凝縮し、それが2つの娘細胞に正確に分配される必要があります。これにはコンデンシンというタンパク質が重要な役割を果たすと考えられていますが、コンデンシンがどのようにしてゲノムDNAに働き、染色体を凝縮させるのかは不明でした。このたび、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 日比野佳代 助教、田村佐知子 テクニカルスタッフ、南克彦 大学院生、島添將誠 大学院生、前島一博 教授のグループ、夏目豊彰 助教、鐘巻将人 教授のグループは、横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 境祐二 特任准教授、理化学研究所 高木昌俊 専任研究員、今本尚子 主任研究員のグループと共同で、分裂するヒト細胞の染色体内をナノメートルレベルで可視化できる超解像蛍光顕微鏡を用い、ゲノムDNAの動きを観察・解析しました。

その結果、高度に凝縮した分裂期染色体においても、ゲノムDNAが揺らいでいることを発見しました。そして染色体が凝縮する過程で、DNAの揺らぎが次第に抑えられ、コンデンシンが「クリップ」のようにDNA同士を結びつけ、DNAの揺らぎを抑えていることが分かりました。また、DNAがヒストンというタンパク質に巻きついた構造であるヌクレオソーム同士の相互作用も、染色体全体を凝縮させる役割を果たすことが明らかとなりました。これらの実験結果は、計算機シミュレーションで作られたモデル染色体でも再現できました。今回の発見は、細胞が分裂する際、長いゲノムDNAから染色体がどのように作られるかを解明するものです。細胞分裂の異常に関連する「がん」などの疾患の理解・治療につながることが期待されます。

本研究は、2024年8月21日に「Nature Communications」にオープンアクセスとしてオンライン掲載されました。

超解像顕微鏡が解き明かす染色体凝縮の仕組み ~コンデンシンが「DNAクリップ」として働く~

図: (左)DNAはヒストンに巻かれてヌクレオソームを形成する。ここでは4 個のヌクレオソームが描かれているが、1つの細胞あたり3000万個ものヌクレオソームが存在する。ヌクレオソームは不規則に折り畳まれて塊(クロマチンドメイン)を形成し、細胞の核のなかに収められている。(右)本研究によって、分裂細胞の染色体のなかの単一のヌクレオソーム(赤)を標識する技術が開発され、その振る舞いが明らかになった。


Single-nucleosome imaging unveils that condensins and nucleosome-nucleosome interactions differentially constrain chromatin to organize mitotic chromosomes.

Kayo Hibino, Yuji Sakai, Sachiko Tamura, Masatoshi Takagi, Katsuhiko Minami, Masa A. Shimazoe, Toyoaki Natsume, Masato T. Kanemaki, Naoko Imamoto, Kazuhiro Maeshima*
*責任著者

Nature Communications (2024) 15, 7152 DOI:10.1038/s41467-024-51454-y

プレスリリース資料

細胞遺伝子工学
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