2025-02-17 名古屋大学
名古屋大学大学院理学研究科の山田 萌恵 助教は、同附属ニューロサイエンス研究センターの松山 裕典 特任助教および理化学研究所環境資源科学研究センターの豊岡 公徳 上級技師との共同研究により、植物の細胞分裂時に細胞板の形成を促進する分子モーターを発見しました。
植物は細胞分裂の最後に細胞板と呼ばれる「壁」を細胞内に構築することで2つの細胞に分離します。細胞板の材料を細胞内で運ぶ機構の存在は示唆されてきましたが、その詳細な機構は長年謎のままでした。
本研究は、細胞板材料が分子モーター「キネシン12」によって運ばれ、細胞分裂面に蓄積することで細胞板が形成される機構を解明した重要な成果です。この結果は植物が進化の過程で細胞分裂機構をどのように適応させてきたかを理解する上でも、重要な知見となることが期待されます。
本研究成果は、2025年2月4日付で英国の科学雑誌『Nature Plants』に掲載されました。
【ポイント】
・植物で独自に進化した分子モータータンパク質「キネシン12注1)」は、細胞分裂時に細胞板注2)の材料を輸送する因子だった。
・「キネシン12」による細胞分裂面への細胞板の材料の輸送が、正常な細胞分裂と器官形成に重要だった。
・植物の細胞質分裂機構の進化に関する理解が大きく前進した。
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【用語説明】
注1)キネシン12:
キネシンは、微小管を足場として機能するモータータンパク質の一種。複数種類存在するキネシンの中には物質に結合したまま微小管上を移動することで物質輸送を担うものもある。キネシン12は微小管を安定化することでフラグモプラスト形成に寄与すると考えられていたが、本研究によって細胞板材料を輸送するモーターであることが明らかになった。
注2)細胞板:
陸上植物が細胞分裂する際に細胞内に形成される板状の構造のこと。細胞板は成熟すると細胞を囲む細胞壁の一面となる。
【論文情報】
雑誌名:Nature Plants
論文タイトル:Class II kinesin-12 facilitates cell plate formation by transporting cell plate materials in the phragmoplast
著者:Moé Yamada(名古屋大学), Hironori J. Matsuyama(名古屋大学), Noriko Takeda-Kamiya(理化学研究所), Mayuko Sato(理化学研究所), Kiminori Toyooka (理化学研究所)
DOI: 10.1038/s41477-025-01909-x
URL: https://www.nature.com/articles/s41477-025-01909-x
【研究代表者】
大学院理学研究科 山田 萌恵 助教