適応外使用を患者申出療養制度のもと多施設共同研究として実施
2019-10-02 国立研究開発法人国立がん研究センター
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉/所在地:東京都中央区)中央病院(病院長:西田 俊朗)は、がん遺伝子パネル検査(注1)で治療候補となり得る遺伝子異常が見つかったものの既承認薬による治療や未承認薬による治験等の選択肢がない患者さんに対して、既承認薬を適応外使用しその治療効果を検討する臨床研究(注2)を実施します。
医薬品の適応外使用(注3)とは、国内で承認されているがん種とは異なるがん種に対して医薬品を投与することを言います。保険外診療となった場合、医療費が全額自己負担となる可能性が高く、患者さんにとって大きな負担となります(適応外薬の薬剤費については「国内で薬事法上未承認・適応外である医薬品について(先進医療・費用対効果評価室)」のページをご参照ください)。また、予期しない副作用が起きる可能性も考えられるため、適切な管理下で実施することが必要です。
本研究は、患者申出療養制度(注4)のもと臨床研究として計画され、患者申出療養評価会議(2019年9月12日)で承認されました。この制度のもとに、患者さんの申出を起点に適応外使用が検討され、実施可となった場合は、適応外薬の費用と研究を適正に行うための費用(患者さんのデータや薬を適切に管理するためのシステムや人件費:約40万円)は原則患者さんにご負担いただきますが、その他の検査や治療等は保険診療として併用することができます。また、治療効果や副作用の評価も行われ、将来的に保険適用を検討する際の参考にされます。
本研究は、国立がん研究センター中央病院が調整事務局となり、がんゲノム医療中核拠点病院11施設で行う多施設共同研究として実施する予定です。患者さんの全額自己負担となりうる適応外薬については、本研究の趣旨に賛同いただいた一部の企業からは無償提供の申し出をいただいており、開始時点ではノバルティスファーマ株式会社から無償提供を受けた医薬品のみを対象として実施予定です。今後さらに多くの企業の協力が得られるようお願いしてまいります。
本研究の対象者
がん遺伝子パネル検査を先進医療または保険診療で実施し、以下の基準を満たす方。(以下以外にも除外基準等があります。)
- 条件を満たさないなどの理由により、別の治験や先進医療に参加できないこと。
- 保険適用または先進医療などで実施された遺伝子パネル検査を受けて、何らかの適応外薬の推奨が、専門家会議(エキスパートパネル)及び担当医からなされていること。
- 遺伝子パネル検査の情報を含む患者さんの情報をがんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録すること、および、本研究で得られたデータをC-CATに登録することに共に同意しており、その情報を本研究や当該医薬品を無償提供した製薬企業に提供することに同意していること。
- 年齢が16歳以上であること。
など
実施医療機関
本研究は、国立がん研究センター中央病院が調整事務局となり、がんゲノム医療中核拠点病院11施設で行う多施設共同研究です。
国立がん研究センター中央病院以外の医療機関については、調整が済み次第、順次組み入れ予定です。
登録開始日
10月1日
登録期間
5年間
患者さんの費用負担
適応外薬: 原則全額負担(医薬品により異なります。)ですが、企業から無償提供の申し出があった医薬品については無償となります。
診療費: 保険診療として負担
研究費: 約40万円(医療機関によって、若干研究準備に係る費用が異なります。)
本研究で使用対象となる医薬品(2019年10月時点)
- ジカディアカプセル
- グリベック錠
- アフィニトール錠
- アフィニトール分散錠
- タフィンラーカプセル
- メキニスト錠
- ヴォトリエント錠
- タシグナカプセル
- ジャカビ錠
上記すべて、ノバルティスファーマ株式会社提供
本研究の参加方法
本研究の対象者となり得る方へは、がん遺伝子パネル検査の結果と合わせ、医師より提示されます。
参加を希望される場合は、本研究への同意と場合によっては患者申出療養の手続き(厚生労働省への申請)が必要です。
研究名称
「遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく複数の分子標的治療に関する患者申出療養」
参考
がん遺伝子パネル検査の保険適用について
中央社会保険医療協議会 総会(第415回) 議事次第
医療機器の保険適用について
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html(外部サイトにリンクします)
第17回患者申出療養評価会議 議事次第
1 患者申出療養に係る新規技術の科学的評価等について
患者申出療養の新規届出技術に対する事前評価結果等について
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000203222_00006.html(外部サイトにリンクします)
国内で薬事法上未承認・適応外である医薬品について
用語解説
(注1)がん遺伝子パネル検査
1度に多数のがんにかかわる遺伝子の変異を調べる検査。がんゲノムプロファイリング検査とも呼びます。単一遺伝子の変異検査を重ねるよりも、検査時間や再生検などの患者さんの負担が軽減できます。
(注2)臨床研究
患者さんに参加・協力していただいて治療法や診断法の有効性や安全性を調べる研究のことをいいます。現在行われている多くの治療法や診断法も、国内および海外で行われた臨床研究によって進歩してきました。
(注3)医薬品の適応外使用
医薬品はその薬を使用する病気(効能・効果)や投与方法(用法・用量)が細かく定められた上で承認され、保険での投与が可能となっていますが、承認されている効能や投与方法以外で医薬品の投与を行うことをいいます。適応外使用は原則保険外診療として実施する必要があります。
(注4)患者申出療養制度
困難な病気と闘う患者の思いに応えるため、先進的な医療について、患者さんの申出を起点とし、安全性・有効性等を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにするものです。患者さんの申出をもとに、臨床研究中核病院が臨床研究を立案し、患者さんの希望する療養を臨床研究として実施する制度です。国内の未承認・適応外のさまざまな治療法が対象になりますが、保険収載を前提とするものに限ります。したがって費用については、未承認薬等の費用に加え、保険収載を目指すためのデータをつくるために、研究支援者の人件費や研究の品質管理、統計解析のための費用などがかかります。
厚生労働省 「患者申出療養」制度とは? https://www.mhlw.go.jp/moushideryouyou/(外部サイトにリンクします)
患者さんからのお問い合わせ先
国立がん研究センター中央病院
相談支援センター
報道関係からのお問い合わせ先
国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室