アブラナ科植物の新しい防虫機構の発見~細胞小器官ERボディが支える新型カラシ油爆弾~

ad

2020-01-15 フッ素原子

 西村いくこ 名誉教授(甲南大学特別客員教授)、山田健志 理学研究科研究員(現・ポーランド国ヤギェウォ大学主任研究員)らの研究グループは、アブラナ科植物が幼植物体と根を食植性動物から守るために獲得した新しい技(新型カラシ油爆弾)を発見しました。

 この技では、細胞小器官ERボディに蓄えられているグルコシダーゼが起爆酵素としてはたらき、忌避物質を放出します。この忌避物質は、わさびの匂いとして私たちにも身近なものです。この技は、食害を受けた植物細胞の応答反応です。外敵の攻撃を受けやすい幼植物体の表皮や常に土中の微生物の感染にさらされている根の表皮の細胞には、多数のERボディが配備されています。食害(傷害)により、ERボディ(起爆酵素グルコシダーゼを集積)と液胞(カラシ油配糖体を集積)が破壊されると、酵素反応により忌避物質が放出されます。この匂いは食植性の昆虫などの小型動物を遠ざける効果をもつことがわかりました。

 ERボディは、アブラナ科植物に特有の細胞小器官ですが、本研究では、たった2つの遺伝子(NAI2BGLU23)の導入により、アブラナ科以外の植物にもERボディを形成誘導することがわかりました。植物の進化の過程で、アブラナ科植物がこれらの2つの遺伝子を獲得することで、ERボディ依存的な化学防御機構をもつことができたと考えられます。

 本研究成果は、2020年1月14日に、国際学術誌「Communications Biology」のオンライン版に掲載されました。

図:ERボディ化学防御系(単細胞型のカラシ油爆弾)

詳しい研究内容について

アブラナ科植物の新しい防虫機構の発見 -細胞小器官ERボディが支える新型カラシ油爆弾-

生物化学工学生物環境工学
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました