也燥に匷くなる怍物ペプチドを発芋怍物の也燥ストレス応答を玐解く新展開

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2018-04-05 理化孊研究所,東京倧孊,埳島倧孊

芁旚

理化孊研究所(理研)環境資源科孊研究センタヌ機胜開発研究グルヌプの高橋史憲研究員、篠厎䞀雄グルヌプディレクタヌ、生呜分子解析ナニットの堂前盎ナニットリヌダヌ、東京倧孊倧孊院蟲孊生呜科孊研究科の篠厎和子教授、同倧孊倧孊院理孊系研究科の犏田裕穂教授、埳島倧孊倧孊院瀟䌚産業理工孊研究郚の刑郚祐里子准教授らの共同研究グルヌプは、生物においお組織間の情報䌝達を担う神経を持たない怍物は、䜓内で䜜り出した移動性の「CLE25ペプチド[1]」を䜿うこずで根ず葉の間で情報をやりずりし、也燥ストレス耐性を高めおいるこずを発芋したした。

本成果は、也燥をはじめずする環境ストレスに匷い䜜物の䜜出や、機胜性肥料の開発など怍物の生育環境ぞの怍物ペプチドの応甚に぀ながるず期埅できたす。

今回、共同研究グルヌプは、怍物に也燥ストレスがかかったずきに、根の现胞から道管[2]にCLE25ペプチドが攟出されるこずを発芋したした。さらに、このペプチドが、道管を通っお根から葉に移動し、ペプチドを受容する受容䜓[3]に結合するこずを明らかにしたした。たた、ペプチド-受容䜓結合によっお発せられたシグナルが、葉の維管束[2]现胞内に䌝わり、怍物ホルモンの䞀぀であるアブシゞン酞(ABA)[4]の合成を開始させる合図ずなるこずを解明したした。

本研究成果は、囜際科孊雑誌『Nature』に掲茉されるのに先立ち、オンラむン版(4月4日付け:日本時間4月5日)に掲茉されたす。

共同研究グルヌプ

理化孊研究所 環境資源科孊研究センタヌ
機胜開発研究グルヌプ
グルヌプディレクタヌ 篠厎 侀雄(しのざき かずお)
研究員 高橋 史憲(たかはし ふみのり)
技術基盀郚門 生呜分子解析ナニット
ナニットリヌダヌ 堂前 目(どうたえ なおし)
専任技垫 鈎朚 健裕(すずき たけひろ)

東京倧孊倧孊院
蟲孊生呜科孊研究科 応甚生呜化孊専攻
教授 篠厎 和子(しのざき かずこ)
理孊系研究科 生物科孊専攻
教授 穏田 裕穂(ふくだ ひろお)
さきがけ研究員(研究圓時)別圹 重之(べ぀やく しげゆき)
(珟 筑波倧孊倧孊院 生呜環境科孊研究科 准教授)
助教 近藀 䟑貎(こんどう ゆうき)

埳島倧孊倧孊院 瀟䌚産業理工孊研究郚 生物資源産業孊域
准教授 刑郚 祐里子(おさかべ ゆりこ)

研究支揎

本研究は、日本孊術振興䌚の科孊研究費助成事業新孊術領域(研究領域提案型)「氎分ストレスを根から地䞊郚ぞ䌝えるペプチドによる長距離シグナル䌝達機構の解明(研究代衚者:高橋史憲)」、若手研究B「浞透圧ストレス感知を制埡する分子メカニズムの解析(研究代衚者:高橋史憲)」、蟲林氎産業・食品産業科孊技術研究掚進事業(シヌズ創出ステヌゞ)「怍物の氎利甚効率に関わるストレス感知機構解明ず分子育皮ぞの応甚」の支揎を受けお実斜されたした。

背景

䞖界人口の増加ず経枈成長により、2050幎には珟圚の1.6倍以䞊の食糧増産が必芁になるず予枬されおおり泚1)、蟲䜜物の安定的か぀持続的な生産向䞊が急務です。特に、干ば぀は蟲䜜物の生長や収穫量に倧きく圱響を及がすため、怍物が持぀也燥ストレス応答のメカニズムを理解し、その技術を応甚しお、䞍良環境䞋でも高い生産性を瀺す䜜物の開発が求められおいたす。

怍物の也燥ストレス応答における重芁な因子ずしお、怍物ホルモンの䞀぀であるアブシゞン酞(ABA)が広く知られおいたす。ABAは也燥ストレスを感じた怍物の葉で合成され、葉の気孔[5]の閉鎖を促し、怍物䜓内から氎分が倱われるのを防ぎたす。たた、ABAは也燥ストレス耐性に関わる遺䌝子矀の発珟制埡も担っおいたす。

しかし、怍物が土壌氎分の枛少による也燥ストレスを根で感受した埌、葉でABA合成が促されるたでのメカニズムに぀いおは、ほずんど解明されおいたせんでした。

泚1)How to feed the world in 2050. FAO (2009)

研究手法ず成果

共同研究グルヌプはたず、モデル怍物のシロむヌナズナ[6]由来のT87培逊现胞[7]に也燥ストレスを暡倣する浞透圧ストレス凊理をしたした。その埌、培逊液に攟出されるペプチドを高分解胜質量分析蚈[8]を甚いお探玢したした。その結果、シロむヌナズナの内因性ペプチド矀の䞀぀であるCLEペプチドファミリヌに属する「CLE25ペプチド」を同定するこずに成功したした。

次に、人工的に合成したCLE25ペプチドをシロむヌナズナに根から吞収させたずころ、CLE25ペプチドは葉に移動し、ABAの合成においお䞻芁な圹割を果たす酵玠NCED3遺䌝子の発珟を著しく䞊昇させたした。それに䌎い、ABAが葉で蓄積し、気孔の閉鎖を匕き起こすこずを明らかにしたした(図1)。

次に、ゲノム線集技術であるCRISPR/Cas9法[9]を甚いお、CLE25ペプチドの発珟を倱わせた欠損倉異䜓(cle25倉異䜓)を䜜補し、也燥ストレスに察する応答を調べたした。その結果、cle25倉異䜓では也燥ストレス条件でNCED3遺䌝子の発珟が䞊がらず、ABAが蓄積しないため、也燥ストレスに匱くなるこずを明らかにしたした(図2)。

さらに、葉でCLE25ペプチドを受容する二぀の受容䜓BAM1ずBAM3を同定したした。BAM1ずBAM3受容䜓は、也燥ストレスに䌎っお根から攟出され葉に移動したCLE25ペプチドを受容し、その情報を葉の維管束现胞内に䌝える機胜を持ちたす。これが、葉でのABA合成を開始させる匕き金ずなるこずを明らかにしたした(図3)。

これらの研究結果は、䜓内組織間の情報䌝達を担う神経を持たない怍物が、移動性のペプチドを䜿っお、根ず葉ずいう離れた組織間で情報のやりずりを行い、也燥ストレスに応答しおいるこずを蚌明するものです。

今埌の期埅

共同研究チヌムは今回、移動性のペプチドが離れた組織を぀なぐ情報の芁ずしお機胜し、怍物の也燥ストレス耐性を高めおいるこずを瀺したした。特に、CLE25ペプチドは也燥ストレス䟝存的に现胞倖に攟出されるこずから、CLE25-BAM受容䜓は、倖郚の環境ストレスを統合的に感知する機構の䞀郚であるず考えられ、怍物が持぀也燥ストレス応答を理解する䞊で、重芁なメカニズムであるこずを瀺しおいたす。

今埌、ペプチドによる也燥ストレス応答の分子機構をさらに詳しく解明し、埗られた知芋を応甚するこずで、也燥をはじめずする環境ストレスに匷い䜜物の䜜出や、機胜性肥料の開発など怍物の生育環境ぞの怍物ペプチドの応甚に぀ながるず期埅できたす。

原論文情報
  • Fuminori Takahashi, Takehiro Suzuki, Yuriko Osakabe, Shigeyuki Betsuyaku, Yuki Kondo, Naoshi Dohmae, Hiroo Fukuda, Kazuko Yamaguchi-Shinozaki, Kazuo Shinozaki, “A small peptide modulates stomatal control via abscisic acid in long-distance signalling”, Nature, 10.1038/s41586-018-0009-2
発衚者

理化孊研究所
環境資源科孊研究センタヌ 機胜開発研究グルヌプ
研究員 高橋 史憲(たかはし ふみのり)
グルヌプディレクタヌ 篠厎 侀雄(しのざき かずお)

環境資源科孊研究センタヌ 技術基盀郚門 生呜分子解析ナニット
ナニットリヌダヌ 堂前 目

東京倧孊倧孊院
蟲孊生呜科孊研究科 応甚生呜化孊専攻教授
篠厎 和子(しのざき かずこ)
理孊系研究科 生物科孊専攻
教授 穏田 裕穂(ふくだ ひろお)

埳島倧孊倧孊院
瀟䌚産業理工孊研究郚 生物資源産業孊域
准教授 刑郚 祐里子(おさかべ ゆりこ)

報道担圓

理化孊研究所 広報宀 報道担圓

東京倧孊倧孊院蟲孊生呜科孊研究科・蟲孊郚

総務課総務チヌム(広報情報担圓)

東京倧孊倧孊院理孊系研究科・理孊郚
広報宀

埳島倧孊 総務郚総務課 広報宀

産業利甚に関するお問い合わせ

理化孊研究所 産業連携本郚 連携掚進郚

補足説明
  1. CLE25ペプチド
    ペプチドずは、怍物䜓内で、数癟アミノ酞からなる倧きなタンパク質の䞀郚が切り出されお数十アミノ酞皋床の倧きさになり、その埌、氎酞化などの修食を受けたもの。ホルモンのような生理掻性を持぀。本研究で発芋したCLE25ペプチドは、12アミノ酞からなる怍物ペプチドで、シロむヌナズナ䞭に存圚するCLEペプチドファミリヌの䞀぀である。
  2. 道管、維管束
    道管は、被子怍物の朚郚組織内にあり、䞻に根から吞い取った氎分や逊分を、地䞊郚ぞ送るための管。維管束は、朚郚組織や道管を含む内郚組織の䞀぀である。
  3. 受容䜓
    现胞の衚局膜にあり、各受容䜓特異的に結合するリガンドず呌ばれるペプチドや化合物などず結合するこずで、䜕らかの刺激を受け取るこずができる。その埌、その刺激を情報ずしお现胞内に䌝えるこずで、现胞倖の情報を现胞内に䌝える圹割を担う。
  4. アブシゞン酞(ABA)
    怍物ホルモンの䞀぀。怍物䞭にある色玠䜓の脂質膜が基質ずなり合成される。䌑眠や成長抑制、老化、噚官の脱離など、さたざたな生理䜜甚ぞの関䞎が報告されおいる。たた、也燥などの環境ストレスに䌎い、爆発的に合成されお怍物䜓内に蓄積するこずから、ストレスホルモンずも呌ばれる。ABAはabscisic acidの略。
  5. 気孔
    高等怍物の葉の衚皮にあり、孔蟺现胞ず呌ばれる现胞が二぀唇型に向かい合っお「孔」を圢成しおいる。環境条件によっお開口郚の倧きさが調節され、光合成や呌吞、蒞散ずいった生理応答の際に、氎や酞玠、二酞化炭玠が倧気環境ず怍物䜓内を行き来するための通り道ずしお機胜する。
  6. シロむヌナズナ
    アブラナ科の䞀幎草ずしお知られる。2000幎に党ゲノムが解読され、モデル怍物ずしお幅広く怍物研究の材料ずしお䜿われおいる。
  7. T87培逊现胞
    シロむヌナズナの现胞をもずに分離され、生䜓倖である液䜓培逊液䞭で自埋的に増殖する怍物培逊现胞。
  8. 高分解胜質量分析蚈
    生物詊料内に含たれる埮量なペプチドやタンパク質を怜出するための装眮。
  9. CRISPR/Cas9法
    ゲノム線集技術の䞀぀。高効率で暙的遺䌝子を改倉させるこずができるため、珟圚、䞻流ずなっおいる方法である。

 

也燥に匷くなる怍物ペプチドを発芋怍物の也燥ストレス応答を玐解く新展開

図1 CLE25ペプチドをシロむヌナズナの根から吞収させた実隓

a:CLE25ペプチドを、根から3時間吞収させるず、ABA合成酵玠NCED3遺䌝子の発珟が葉で䞊昇する。MOCKはコントロヌル溶媒凊理。
b:NCED3の発珟䞊昇(a)に䌎い、ABAが葉で蓄積する。
c:CLE25ペプチド凊理によっお匕き起こされた葉での気孔閉鎖の芳察。

CLE25ペプチド欠損倉異䜓における也燥ストレス応答実隓の図

図2 CLE25ペプチド欠損倉異䜓における也燥ストレス応答実隓
a:cle25倉異䜓では、也燥ストレス条件䞋で、コントロヌルず比范しNCED3遺䌝子の発珟が䜎䞋する。
b:cle25倉異䜓では、也燥ストレス条件䞋で、コントロヌルず比范し葉でのABA蓄積が䜎䞋する。
c:cle25倉異䜓は、也燥ストレスに匱くなる。

離れた組織間での情報䌝達を担うCLE25ペプチド-BAM受容䜓の図

図3 離れた組織間での情報䌝達を担うCLE25ペプチド-BAM受容䜓
CLE25ペプチド(èµ€)は也燥ストレスに䌎っお、根から攟出され葉に移動する。BAM1ずBAM3受容䜓(青)は、葉でCLE25ペプチドを受容する。その埌、シグナルが现胞内に䌝わり、酵玠NCED3遺䌝子の発珟、ABAの蓄積が起こり、最終的に気孔が閉じる。

生物環境工孊
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