民間航空機への搭載に道。航空機のCO₂排出削減に貢献可能に
2020-06-08 新エネルギー・産業技術総合開発機構,株式会社IHI
NEDOと(株)IHIは、微細藻類からバイオジェット燃料を安定生産する技術の開発事業を進めています。(株)IHIは、本事業で確立したバイオジェット燃料の生産技術により、国際規格「ASTM D7566 Annex7」を取得しました。
これにより、当技術で生産されたバイオジェット燃料は、所定の割合で既存のジェット燃料と混合して民間航空機の運航に供給することが可能となり、航空機が排出するCO2の削減効果が一層期待されます。本年中には、国内定期便でこのバイオジェット燃料を利用した商用飛行デモフライトも予定しています。
図 微細藻類からのバイオジェット燃料製造プロセス
1.概要
世界的な温室効果ガス削減活動の中で、国際航空分野からのCO2排出削減を所管する国際民間航空機関(ICAO)は、CO2排出量の増加抑制目標(制度)を定め、日本においても再生可能な代替航空燃料の生産事業を始めとする、航空輸送に関わるCO2排出量を削減する技術の社会実装が喫緊の課題となっています※1。
こうした背景から、バイオジェット燃料生産技術に関しては、次世代技術※2の展開が注目されており、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と株式会社IHIは、高速で増殖する微細藻類(高速増殖型ボツリオコッカス※3)を大量培養し、その微細藻類が生成する藻油から燃料を一貫製造するプロセスの次世代技術開発事業※4に取り組んでいます。
2017年度から開始した本事業では鹿児島県とタイ(サラブリー県)において事業化に向けた培養試験を進めるとともに、微細藻類を原料としたバイオジェット燃料を製造し、この度、国際規格であるASTM D7566※5 Annex7を取得しました。
2.ASTM D7566 Annex7について
今回承認されたASTM D7566規格は、国際的な標準化・規格設定機関であるASTM Internationalが定めるバイオジェット燃料の製造に関する規格です。この規格に適合した燃料は、既存ジェット燃料(ケロシン)と同性状であって、既存の燃料と混合使用してもエンジンなどの航空機材や燃料供給設備といったインフラの改修を必要としないドロップイン型燃料とされ、日本国内はもちろん、世界の民間航空機の運航で使用可能となっています※6。
さらにAnnex7は、微細藻類ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)から生産した粗油(炭化水素を主成分とする)を水素化処理で合成したバイオジェット燃料に関する新しいAnnexであり、微細藻類が単独の原材料として明記され、非可食植物の大量培養によりジェット燃料を製造する規格となっています。
- ・規格発行:2020年5月
- ・規格番号:ASTM D7566 Annex7 (規格申請企業:(株)IHI)
- ・規格策定機関:ASTM International
3.今後の予定
本技術開発の成果を踏まえ、早期にバイオジェット燃料生産の商用事業化を目指します。また、燃料製造・供給に向けたサプライチェーン構築の検討を進め、バイオジェット燃料の生産拡大・普及を通じて、今後の航空分野におけるCO2など温室効果ガス排出量の一層の削減を目指します。また、本年中に、本事業で生産したバイオジェット燃料を国内定期便に供給し、商用飛行デモフライトを予定しています。
【注釈】
- ※1 CORSIA (Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)
- 国ごとに参加(2027年より義務的参加、一部途上国等を除く)。運航者個別にCO2排出量の上限を設定。
CORSIA
国土交通省プレスリリース
ICAO第39回総会(2016年開催)にて、世界的な温室効果ガス排出削減制度の内容を定めた決議を全会一致で採択。
第39回国際民間航空機関(ICAO)総会の結果概要について - ※2 次世代技術
- 食料と競合しない非可食原料由来の燃料製造技術。
- ※3 高速増殖型ボツリオコッカス
- 培養速度を向上するべく改良された、油分の多い微細藻類。
- ※4 NEDO開発事業
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- 事業名 バイオジェット燃料生産技術開発事業/一貫製造プロセスに関するパイロットスケール試験/高速増殖型ボツリオコッカスを使った純バイオジェット燃料生産一貫プロセスの開発
- 事業者 株式会社IHI (事業期間 2017年度~2020年度)
国立大学法人神戸大学 (事業期間 2017年度~2018年度)
- ※5 ASTM D7566
- ASTM International(旧称American Society for Testing and Materials: 米国試験材料協会)が定める航空用代替ジェット燃料に関する規格。
- ※6 国土交通省航空局サーキュラー(国空機第1718号)
- ASTM D7566適用燃料が、航空機に使用可能と認められています。
航空機に搭載する代替ジェット燃料(ASTM D7566規格)の取扱いについて
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 新エネルギー部 担当:古川、小林
(株)IHI 広報・IR部 担当:柴田
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:佐藤、坂本