2020-10-14 京都大学
佐藤慎哉 生命科学研究科助教、松田道行 同教授、山下高廣 理学研究科助教の研究グループは、網膜内の酵素の働きを観察する顕微鏡法を開発して、cAMP依存性キナーゼ(PKA)と呼ばれる酵素が光オフ、すなわち暗黒をきっかけにして網膜内での働きを強めることを世界で初めて発見しました。
以前より、松田教授の研究グループでは生物内部で働く様々な酵素の働きを蛍光顕微鏡で直接観察する技術の開発を進めてきました。今回の発見は、その技術が生み出した遺伝子改変マウスPKAchuを網膜の研究に応用することで実現されました。本研究ではさらに、顕微鏡の高い解像度を生かして、PKAの働きが強まるのは桿体視細胞と呼ばれる、暗所視力を担う光センサー細胞だけであることも突き止めました。これらのデータから、発見された現象は暗所視力を補助するものだと予想されます。
本研究成果は、2020年10月13日に、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー 紀要)」のオンライン版に掲載されました。
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1073/pnas.2009164117
Shinya Sato, Takahiro Yamashita, and Michiyuki Matsuda (2020). Rhodopsin-mediated light-off-induced protein kinase A activation in mouse rod photoreceptor cells. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America.