臨床ゲノム解析推進部の重水大智ユニット長らの論文がAlzheimer’s Research and Therapyに掲載されました

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2020-11-27 国立長寿医療研究センター

概要

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター・メディカルゲノムセンターの重水大智ユニット長、尾崎浩一部長を中心とした研究チームは、軽度認知障害(MCI)者からアルツハイマー病(AD)者への移行にかかわるバイオマーカーを血液マイクロRNAと全ゲノム配列情報から同定し、高精度な進行予測モデル(機械学習モデル)の開発に成功しました。

一部のMCI者はADに移行しないケースもありますが、年に約10-15%のMCI者がADへ移行すると報告されています。現在、AD者を治す治療法はないため、AD移行のリスクの高いMCI者を事前に予測することができれば、早期介入によりAD移行を遅延させることが期待されます。

研究チームはメディカルゲノムセンターが保有する197のMCI者 (83 MCI-C: ADへ移行したMCI者、114 MCI-NC: ADへ移行していないMCI者)の2,562種の血液マイクロRNA(miRNA)と2,836,104種のゲノム配列(SNP)データを用い、AD移行に関与するバイオマーカーになるmiRNAとSNPの組み合わせ(eQTL)を網羅的に調べました。その結果、24個のeQTLを用いた予測モデルが構築され、AD移行を高精度に予測することができました(図1)。この24eQTLにかかわる分子のターゲット遺伝子群のタンパク質間相互作用ネットワーク解析※1 から、中心的な役割を果たす4個のハブ遺伝子※2 (SHC1, FOXO1, GSK3B, PTEN)を同定しました。これらの遺伝子の血中での発現を調べたところ、PTENとSHC1の2遺伝子が認知機能正常者とAD者で有意な発現差を示しました(図2)。MCI-CとMCI-NC間では有意な発現差がみられないことから、認知機能低下の進行に伴って差が生じると考えられ、発現量の変化をフォローすることで発症予測につながる可能があります。この研究成果は、英国の科学雑誌「Alzheimer’s Research and Therapy」に、2020年11月10日付でオンライン掲載されました。

臨床ゲノム解析推進部の重水大智ユニット長らの論文がAlzheimer’s Research and Therapyに掲載されました

図1. 24eQTLによる予測モデルの結果
(a)   学習データによる予測結果 (b) 独立なテストデータによる予測結果

図2. 血中のハブ遺伝子の疾患間における発現差解析

用語解説

※1 タンパク質間相互作用ネットワーク解析
多くのタンパク質は他のタンパク質や生体高分子と相互作用することでその機能を果たす(構造タンパク質、代謝、シグナル伝達、転写など)。よって、タンパク質の機能を解明する上でタンパク質間相互作用は必要不可欠である。

※2 ハブ遺伝子
遺伝子ネットワーク上で多数の遺伝子と相互作用する遺伝子。生物学的に重要であるとされる。

タイトル

Prognosis prediction model for conversion from mild cognitive impairment to Alzheimer’s disease created by integrative analysis of multi-omics data

著者名

Daichi Shigemizu*, Shintaro Akiyama, Sayuri Higaki, Taiki Sugimoto, Takashi Sakurai, Keith A Boroevich, Alok Sharma, Tatsuhiko Tsunoda, Takahiro Ochiya, Shumpei Niida, Kouichi* Ozaki.

論文リンク(Alzheimer’s Research and Therapyのサイトへ移動します)

医療・健康細胞遺伝子工学
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