2020-12-04 国立遺伝学研究所
Neuronal Circuits That Control Rhythmic Pectoral Fin Movements in Zebrafish
Yuto Uemura, Kagayaki Kato,Koichi Kawakami, Yukiko Kimura, Yoichi Oda, and Shin-ichi Higashijima
The Journal of Neuroscience 40, 6678-6690 (2020). DOI:10.1523/JNEUROSCI.1484-20.2020
1. 背景
中枢パターン生成器(セントラルパターンジェネレータ;CPG)は、外部からのリズミックな入力なしに、脊椎動物における歩行や遊泳の際の左右交互の動きのような、リズミックな運動出力パターンを形成する回路です。CPGは脊髄に局在しており、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンで構成され、興奮性ニューロンがリズムそのものを駆動し、抑制ニューロンが出力のタイミングおよび活動パターンを形成していると考えられていますが、その実体―神経回路―は、よくわかっていません。
2. 結果
魚類は左右のヒレを交互に動かします。ゼブラフィッシュの幼生の胸鰭(むなびれ)の動きは、リズミカルな付属肢の動きの原型と考えることができます。片側のひれにおいては外転筋と内転筋の交互の運動(屈筋と伸筋の動きに対応)が見られ、両側のひれにおいては左右の交互の運動が見られます。本研究では、リズミカルな胸鰭の動きの基盤となる神経回路を解析しました。私たちは、外転筋と内転筋の両方の運動神経が、それぞれ活動期と非活動期にリズミカルな興奮性シナプス入力と抑制性シナプス入力を受け取ることを明らかにしました。これは、運動神経の活動がプッシュプル方式で制御されていることを示しています。さらに、dmrt3aを発現する交叉型抑制性ニューロンが外転筋運動神経に対して抑制的にはたらくことを明らかにしました。
3. 今後の期待
本研究の成果により、リズミカルなひれの動きを作り出す中枢パターン生成器(セントラルパターンジェネレータ)の神経基盤の実体についての理解が進みました。また、四肢動物の歩行の際の左右の四肢の交互の動きを生み出す神経回路の実体の解明にもつながることが期待できます。
本研究は、基礎生物学研究所 神経行動学研究部門/生命創成探究センター 東島眞一教授との共同研究として行われました。本研究は部分的に、NBRPおよびNBRP基盤技術整備プログラムに支援されました。
図1:ゼブラフィッシュ幼生の遊泳時における左右交互の胸鰭の動き。
図2:A1、A2 胸鰭の外転筋を支配する運動神経をラベルしたトランスジェニックフィッシュ。
B1、B2 胸鰭の内転筋を支配する運動神経をラベルしたトランスジェニックフィッシュ。