心原性ショックに対するECMOからの離脱を予測する新たな臨床指標を解明

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2020-12-07 国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(略称:国循)心臓血管内科部門(副院長 野口暉夫)の澤田賢一郎医師、川上将司医師(飯塚病院循環器内科)、安田聡 東北大学大学院循環器内科学分野教授(兼国立循環器病研究センター客員部長)らの研究チームは、心停止や難治性心原性ショック(注1)患者に対して体外式膜型人工肺(ECMO)(注2)による循環補助を行った重症心不全患者の解析を行い、ECMOからの離脱を予測する指標として心エコー図により計測された補正左室駆出時間(以下 LVETc)(注3、図1)を肺動脈カテーテル検査により計測された肺動脈楔入圧(以下 PAWP)で補正したLVETc/PAWPが有用であることを明らかにしました。本研究成果は英文医学雑誌「ESC Heart Failure」に令和2年12月2日に掲載されました。

背景

CMOは一般的に遠心ポンプと膜型人工肺を用いた人工心肺装置により、心肺補助を行います。重症肺炎などで肺の機能を補助する場合は静脈(Venous)から静脈(V)に送るV-V ECMO(ブイブイエクモ)、心臓(循環)の機能を補助する場合は静脈(V)から動脈(Artery)に送るV-A ECMO(ブイエイエクモ)と2通りの補助法があります。重篤な状態で装着されるため、安全に離脱する信頼できる臨床指標が求められてきました。

研究手法と成果

研究チームは、国循で2013年1月から2017年3月までに心停止、難治性心原性ショックの適応でV-A ECMOによる循環補助を行った患者50名を対象とし、離脱を予測する臨床指標を分析しました。心エコー図により計測されたLVETcを肺動脈カテーテル検査により計測されたPAWPで補正したLVETc/PAWPが有用であることを明らかにしました(図1)。特にLVETc≧208 msかつPAWP≦15 mmHg群での離脱率が高く、治療の具体的な目安となる数値データと考えられます(図2)。

今後の展望と課題

補正左室駆出時間や肺動脈楔入圧の測定は、簡便かつ測定者間での誤差も少なく、V-A ECMOからの離脱を予測するに当たり、広く活用できる指標となると考えられます。現在ECMO研究が世界的に進められていますが、V-A ECMOによる循環補助に関する新たな知見として重症患者の管理に役立つことが期待されます。

〈注釈〉
(注1)心原性ショックとは心臓のポンプ機能が低下することにより、全身の臓器や組織に十分な血液が届かなくなり、臓器の機能障害や意識障害をきたすことです。急性心筋梗塞、不整脈、心筋症などが原因となります。適切な薬物治療などを行なっても治療効果が得られない場合を、難治性心原性ショックといいます。

(注2)ECMOとは体外式膜型人工肺(Extracorporeal Membrane Oxygenation)の略称です。

(注3)左室駆出時間は、大動脈弁Mモード心エコー図により大動脈弁開放時間を測定しています。一回心拍出量と相関する指標であり、心拍数、心収縮能、前負荷、後負荷の影響を受けるため、心拍数で補正した補正左室駆出時間(LVETc)を用いています。

発表論文情報

著者:Kenichiro Sawada, Shoji Kawakami, Shunsuke Murata, Kunihiro Nishimura, Yoshio Tahara, Hayato Hosoda, Takahiro Nakashima, Yu Kataoka, Yasuhide Asaumi, Teruo Noguchi, Masaru Sugimachi, Tomoyuki Fujita, Junjiro Kobayashi, Satoshi Yasuda
題名:Predicting Parameters for Successful Weaning from Veno-Arterial Extracorporeal Membrane Oxygenation in Refractory Cardiogenic Shock
掲載誌:ESC Heart Failure
DOI: 10.1002/ehf2.13097

<図>
(図1)心エコー図検査の傍胸骨左縁長軸像(左図)とMモード法による左室駆出時間(右図)

(図2)補正左室駆出時間(LVETc)と肺動脈楔入圧(PAWP)の関係
LVETc≧208 msかつPAWP≦15 mmHg群(左上:Class 1)のV-A ECMOの離脱率が高いことが判明しました。

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