新型コロナウイルス変異株に対する中和抗体の質が時間と共に向上することを発見

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2021-07-05 国立感染症研究所,日本医療研究開発機構

  • 新型コロナウイルスの変異株は、回復者やワクチン接種者が獲得する中和抗体※1から逃避するリスクが懸念されている。
  • 抗体応答は、時間と共に抗体の質を変化させることが可能であるものの、新型コロナウイルス変異株への結合性にどのような影響があるのか、詳細は不明であった。
  • 今回の研究において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)回復者が変異株に交差結合する抗体を獲得し、この抗体の質(中和比活性・交差性)は時間と共に向上することを発見した。
  • この現象は、変異株へのワクチン戦略に重要な知見になる。
概要

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業において、国立感染症研究所治療薬・ワクチン開発研究センター(高橋宜聖センター長、森山彩野主任研究官、安達悠主任研究官)と同研究所抗体検査チーム(チーム長 鈴木忠樹部長)は、東京品川病院(佐藤隆研究センター長、新海正晴治験開発・研究センター長)と共同で、COVID-19回復者での中和抗体の質が時間と共に向上することを発見しました。

新型コロナウイルスの一部の変異株は、回復者やワクチン接種者が獲得する中和抗体から逃避するというデータが相次いで報告され、今後のワクチン戦略にも影響を与える可能性が指摘されています。

本研究グループは、抗体応答が時間と共に変化し、抗体の質が改善される親和性成熟現象※2を長年研究してきた実績があります。今回、188例のCOVID-19回復者の中和抗体の量と質を発症後10カ月まで経時的に解析しました(図1)。

新型コロナウイルス変異株に対する中和抗体の質が時間と共に向上することを発見
図1 国内COVID-19回復者を対象とした免疫研究の流れ異なる重症度のCOVID-19回復者から、経時的に採血を行い、中和抗体の量と質を解析しました。全ての回復者は、国内で最初に変異株が検出された時期より前に発症していることから、従来株に感染したと考えられます。


まず、主要な中和抗体の標的部位であるスパイクタンパクの宿主レセプター結合領域(receptor binding domain; RBD)に、ベータ変異株で特徴的な3つの変異(K417N/E484K/N501Y)を入れた変異RBDタンパクを作製し、従来株RBDのみに結合する抗体と変異株RBDにも結合する抗体を別々に定量しました(図2左)。各抗体の経時推移を比較すると、COVID-19重症度に関わらず変異株RBDにも結合する抗体は減衰速度が緩やかであり、持続性に優れていることが分かりました(図2右)。加えて、抗体あたりの中和活性(中和比活性)と交差性(変異株に対する中和比活性)が経時的に増加することが分かりました(図3)。つまり、我々の免疫系は変異株にも適応力のある質の高い抗体の比率を時間と共に高めることが可能であることが分かりました(図4)。この変異株にも結合する抗体は、今後ワクチンで誘導する標的抗体として、あるいは抗体医薬としての利用価値があると考えられます。


図2 COVID-19回復者は変異RBDに結合する抗体を獲得し長期的に維持する変異株由来のRBDタンパク(K417N/E484K/N501Y変異を有する)を使用することにより、従来株のみに結合する抗体と変異株にも結合する抗体を別々に定量することができます。各抗体の経時推移を比較すると、変異RBDにも結合するIgG抗体の減衰率が低く、持続性に優れていることが分かりました。
図3 変異株への中和抗体比活性と交差性は時間と共に向上する変異株(P.1;ガンマ株)に対する中和抗体の質(中和比活性・交差性)の経時推移を採血1回目(T1)と2回目 (T2)の検体間で比較しました。
図4 中和抗体の総量は減衰する一方、中和抗体の質は経時的に向上する(概念図)黒は従来株のみに結合する抗体、赤は変異株にも結合する抗体を示しています。


本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(研究分担者 高橋宜聖JP19fk0108104、JP20fk0108104)の一環として行われました。

本研究成果は、2021年7月2日にImmunityからオンライン公開されました。

「Temporal Maturation of Neutralizing Antibodies in COVID-19 Convalescent Individuals Improves Potency and Breadth to Circulating SARS-CoV-2 Variants」

(COVID-19回復者での中和抗体が時間と共に成熟することにより、変異株への活性と交差性が向上する)

用語解説
※1 中和抗体
中和抗体とは特定のタンパク質の活性を中和できる抗体のことで、ウイルスのタンパク質に結合して感染を防ぐ作用を示す。
※2 親和性成熟現象
多くのウイルス感染やワクチン接種で誘導される抗体は、時間が経過するにつれて各抗体タンパクをコードする遺伝子に変異が入り、抗原に対する結合親和性が高い抗体が選択される。その結果、血液中の抗体の結合親和性は時間と共に増加する。適応免疫の代表的な現象の1つ。
お問い合わせ先

研究に関するお問い合わせ先
国立感染症研究所
治療薬・ワクチン開発研究センター センター長 高橋宜聖

報道に関するお問い合わせ先
国立感染症研究所 総務部調整課

AMED事業に関するお問い合わせ先
日本医療研究開発機構 創薬事業部創薬企画・評価課
新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業

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