「橋渡し研究推進センター」を開設基礎研究シーズと医療の現場のニーズを結びつけ、革新的ながんの診断・治療・予防開発をサポート

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2020-07-15 国立研究開発法人国立がん研究センター

発表のポイント

  • 医薬品・医療機器等の橋渡し研究(注1)を支援してきた各部局の専門家が横断的に集まる「橋渡し研究推進センター」を2021年7月1日に開設しました。
  • 「橋渡し研究推進センター」は、国立がん研究センター各部局のノウハウを集約し、国内外の優れた基礎研究の成果を、実用化に向けた臨床開発へシームレスに展開する新組織です。
  • 国立がん研究センター内に止まらず、国内外の研究機関、ベンチャー企業等の優れた基礎研究シーズ(注2)をより的確・効率的に医療の現場のニーズと結びつけ、革新的ながん医療技術の実用化を目指します。

橋渡し研究推進センターのメンバー(2021年7月1日時点)

「橋渡し研究推進センター」を開設基礎研究シーズと医療の現場のニーズを結びつけ、革新的ながんの診断・治療・予防開発をサポート
柏キャンパス

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築地キャンパス

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区、以下国立がん研究センター)は「橋渡し研究推進センター(CPOT:Center for Promotion of Translational Research、センター長:落合 淳志、千葉県柏市)」 を2021年7月1日に開設しました。

「橋渡し研究推進センター」は、国内外の高度かつ先進性の高い基礎研究成果や臨床現場のニーズに基づくシーズの発掘・育成を支援し、それらの臨床開発への展開を強化することを目的に発足した新組織です。国立がん研究センター各部局(中央病院・東病院・先端医療開発センター・研究所)のノウハウを集約し、基礎研究から臨床開発まで、切れ目のない橋渡し研究を支援します。「橋渡し研究推進センター」ではがんに特化した開発企画、シーズ発掘・評価、プロジェクトマネージメントなど、研究支援業務の標準化や情報共有を図り、センター内外のシーズ保有者に、実用化に向けたワンストップサービスを提供します。さらに、国内外の大学等の研究機関や企業等との連携を積極的に推進し、シーズ育成に関わる専門人材育成の拠点形成を目指します。

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橋渡し研究推進センター発足式の様子(2021年7月1日)

写真左から:橋渡し研究推進センター 支援責任者 土原 一哉、橋渡し研究推進センター長 落合 淳志、国立がん研究センター 理事長 中釜 斉、東病院長 大津 敦、理事長特任補佐 中山 智紀

背景

医療分野や生命科学分野での研究開発の加速により、がんをはじめとする疾患メカニズムの解明や新たな診断・治療技術の開発、AIやビッグデータ等の利活用による創薬・医療機器開発、個人の状態に合わせた個別化医療・精密医療の進展が見込まれています。日本発の革新的な医療開発を支えるためには、基礎から実用化までの一貫した研究開発体制の整備が求められています。これまで国立がん研究センターでは各部局において、活発な橋渡し研究を実施してきました。

研究所では、ゲノム解析など最新の技術を駆使した研究から治療・診断法のシーズを作り出すとともに、基盤的臨床開発研究コアセンター(FIOC)(注3)においてバイオリソース(患者由来がんモデル)の開発や橋渡し研究に必要な各種解析、動物実験などを支援しています。また中央病院とともにTsukiji TR Boardを設け、橋渡し研究実施体制を構築しています。先端医療開発センター(EPOC)(注4)は、創薬シーズ研究およびバイオマーカー探索から新しい診断・検査法開発へと、基礎研究から臨床研究への橋渡しを行っています。また研究企画推進部門に専門の室を設け、橋渡し研究の支援を行っています。

中央病院、東病院はともに臨床研究中核病院(注5)の承認を受け、国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的な役割を担う病院として整備が進められ、臨床開発において国内トップの実績をあげています。 東病院NEXT医療機器開発センターでは臨床と開発の現場が密接した環境を生かし医療機器開発を行っています。2019年には国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「次世代医療機器連携拠点整備等事業」に採択され、研究支援の専門人材を集めています。

また臨床開発には、国内や海外の専門機関、開発企業等とのネットワークが不可欠です。東病院を中心に全国の200以上の医療機関と製薬企業等が参加する産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクト「SCRUM-Japan(注6)」を基盤に数多くの治験が実施され、治療薬・診断薬の承認につなげるとともに、データを国際的に共有する基盤が構築されています。中央病院では希少がんの産学共同プロジェクト「MASTER KEYプロジェクト(注7)」、AMED国際共同臨床研究実施推進拠点として、「アジアがん臨床試験ネットワーク事業(ATLASプロジェクト)(注8)」等を実施しています。

「橋渡し研究推進センター」の役割

国立がん研究センター内に加えて大学等の基礎的な研究成果や、ベンチャー企業等の萌芽的な技術に基づくシーズを国内外から発掘します。加えて、臨床開発に発展させるために必要な非臨床試験の専門的な助言を行うなどの支援機能を行い、中央病院、東病院で実施する臨床試験への展開を強化します。また医師、臨床研究者に加え、看護部門等の広範な医療従事者の臨床経験に基づくニーズを収集・分析し、シーズとのマッチングを推進します。
そのため、各部局においてシーズ開発支援を実践している下記のメンバーでチームを形成し、橋渡し研究推進センター長の責任下で研究支援業務の標準化や情報共有を図ります。

  1. シーズを有する研究者等と協働して開発方針を策定する開発企画担当者
  2. センター内外のシーズに関する情報収集を行い、科学的・医学的・倫理的な面からシーズの社会的意義や臨床上の意義、研究開発の可能性を評価するシーズ発掘・評価担当者
  3. 研究者及び開発企画担当者が策定した開発方針に基づき、実用化に向けた具体的な開発戦略を立案し、シーズの研究開発が滞り無く進むよう管理・推進するプロジェクトマネージャーなど

また、高度な臨床試験を支援する東病院、中央病院の臨床研究支援部門や知的財産・産学連携等の担当部局とも緊密に連携します。これらによってセンター内外のシーズ保有者に対するワンストップサービスを提供します。また、シーズ開発に関わる国内外の大学等の研究機関や企業等との連携も積極的に推進し、理学・工学・薬学など幅広い分野の専門家が参画したシーズ開発と研究支援に関する専門人材育成のための拠点形成を目指します。

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用語解説

(注1) 橋渡し研究

主に公的研究機関・大学等の基礎研究の分野で生まれた新しい医学知識や革新的技術を、病気の予防・診断・治療・QOL(クオリティーオブライフ、生活の質)の向上に活かすために実用化するための研究のこと。トランスレーショナル・リサーチともいう。

(注2) シーズ

英語で種(seeds)を意味する。研究機関や企業等がもつ技術、ノウハウ、アイデア、人材、設備など。

(注3) 基盤的臨床開発研究コアセンター(FIOC)

国立がん研究センター全体のTR(基礎から臨床への橋渡し研究)とリバースTR(臨床から基礎への橋渡し研究)を推進するため、2014年10月に研究所内に設置された。
ホームページ https://www.ncc.go.jp/jp/ri/fioc/index.html

(注4) 先端医療開発センター(EPOC)

2015年に設立され、がん(Cancer)の治癒(Cure)及び克服(Conquer)(Conquer and Cure Cancer=“3C”)を目指し、がんの医薬品や医療機器の開発に向けたシーズ探索から前臨床、早期臨床試験までを一貫して支援・実施している。
ホームページ https://www.ncc.go.jp/jp/epoc/index.html

(注5) 臨床研究中核病院

日本発の革新的な医薬品や医療機器の開発に必要となる質の高い臨床研究や治験を推進するため、国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う病院として医療法上に位置づけられた病院。2021年7月現在、全国で14病院が承認されている。

(注6) SCRUM-Japan

広範な固形がん患者さんを対象に、最適な治療薬を届けるためにがんの遺伝変化を調べるプロジェクト。
ホームページ http://www.scrum-japan.ncc.go.jp/index.html

(注7) MASTER KEYプロジェクト

希少がんの研究開発およびゲノム医療を推進する、産学共同プロジェクト。
ホームページ https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/masterkeyproject/index.html

(注8) ATLASプロジェクト

アジア地域における臨床研究・治験実施体制整備を目的としたプロジェクト。
ホームページ https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/ATLAS/index.html

問い合わせ先

患者さん・医療関係者・企業からのお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター
橋渡し研究推進センター 担当:坂下 信悟、土原 一哉

取材・報道関係からのお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室(柏キャンパス)

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