細胞同士が影響し合い良性腫瘍ががん化する仕組みを解明

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細胞同士の協力関係を標的にした新たながん治療への期待

2021-07-29 京都大学

がんは1種類の腫瘍細胞から形成されているわけではなく、異なる変異をもった複数種類の腫瘍細胞から成っています。このようながん組織の状態は、「腫瘍内不均一性」と呼ばれます。腫瘍内不均一性は、浸潤・転移能や抗がん剤抵抗性といったがんの特性に寄与していると考えられていますが、その仕組みはよくわかっていません。

今回、井垣達吏 生命科学研究科教授、榎本将人 同助教の研究グループは、ショウジョウバエを用いて腫瘍内不均一性によるがんの進展メカニズムを解析する中で、「Ras」あるいは「Src」という異なるがん遺伝子を活性化した良性腫瘍細胞が上皮組織中で隣り合うと、互いが悪性化して浸潤・転移能を獲得する(がん化する)ことを発見しました。

さらにそのメカニズムとして、Ras腫瘍細胞とSrc腫瘍細胞ではそれぞれDeltaリガンドとNotch受容体という細胞表面のタンパク質の発現量が上昇しており、DeltaとNotchが相互作用することでSrc腫瘍細胞内で「Notchシグナル」が活性化することがわかりました。Src腫瘍細胞内で活性化したNotchシグナルは、転写抑制因子Zfh1(ヒトではZEB1と呼ばれる)の発現誘導を介して細胞同士を接着させる「E-カドヘリン」や細胞死を誘導するHidと呼ばれるタンパク質の発現量を低下させ、がん化することがわかりました。さらに、Src細胞内で活性化したNotchシグナルはIL-6と呼ばれる炎症性サイトカインを発現誘導し、細胞外に分泌されたIL-6が隣接するRas腫瘍細胞の細胞表面の受容体を介してRas細胞内のJAK-STATシグナルを活性化し、その結果Ras細胞内でもE-カドヘリンの発現量が低下してがん化することがわかりました。

このように、2種類の良性腫瘍細胞(Ras細胞とSrc細胞)が近接すると、細胞表面のタンパク質を介して互いに影響を及ぼし合うことでがん化する仕組みがわかりました。 今回明らかになった腫瘍細胞同士の協力関係を標的とすることで、新たながん治療法の開発につながる可能性が期待されます。

本研究成果は、2021年7月29日に、国際学術誌「Developmental Cell」のオンライン版に掲載されました。


図:本研究の概要図

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:井垣達吏
研究者名:榎本将人

メディア掲載情報
京都新聞(7月29日 29面)および日刊工業新聞(7月29日 23面)に掲載されました。

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