体内時計は夜間に自然免疫を発動~皮膚ケモカインによる自然免疫機構~

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2022-06-16 京都大学

辻花光次郎 医学研究科博士課程学生、岡村均 同研究員(同名誉教授)と種子島幸祐 東京都医学総合研究所主席研究員、原孝彦 同プロジェクトリーダーらの研究グループは、皮膚の生体リズムが抗菌免疫を制御する仕組みについて解明しました。

本研究グループは、生体リズムの皮膚での役割を探るため、マウス表皮のさまざまな時間での遺伝子発現を網羅的に解析しました。すると、ケモカインと呼ばれる免疫を制御する遺伝子の一つCXCL14が生体リズムに沿った発現変動を示すことを見出しました。夜行性マウスでは、CXCL14の発現は、昼は高く、夜は低かったのに対し、ヒトと同じ昼行性の霊長類であるコモンマーモセットでは、昼は低く、夜は高かったのです。リズミカルに発現したCXCL14は黄色ブドウ球菌のDNAに強く結合し、Toll-like receptor 9(TLR9)と呼ばれる細菌DNAのセンサー分子を活性化することで、自然免疫を発動し、病原体の過剰増殖から皮膚を保護しました。このように、生体リズムは、細菌など病原体から身体を守る免疫の最初の段階で、自然免疫の発動を駆動させることが解明されました。

本研究成果は、2022年6月15日に、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」にオンライン掲載されました。

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本研究の概要図

研究者のコメント

「黄色ブドウ球菌は、膿痂疹、蜂巣炎、膿瘍などの皮膚感染症としては最も良く知られた細菌で、外傷、熱傷、手術創などに続いて感染悪化させる原因菌としても良く知られています。こういう菌が常時身体の外にあっても、それほど増えすぎず、私たちは元気なのです。今回の研究によって、このような異物を直ぐに認知し、消退させる機能の一端を明らかにすることができました。
生体リズムは、皮膚の血流の循環、皮膚の細胞の代謝などさまざまな皮膚機能に関与していることが、既に知られています。今回は、表皮細胞から免疫を駆動するのに役立つ物質が、夜、寝ている間に作られることがわかりました。皆さんも生体リズムを乱すような生活をすると、肌荒れなどが起こりやすいことはわかっておられるでしょうが、夜間睡眠をしっかりとって、CXCL14のような免疫応答を上げる物質をしっかり作って、ウイルスや細菌に負けない身体を作ってください。
今回取り上げた、生体リズムも自然免疫系も、非常に古くからある生体機能システムです。いずれも、数億年以上前の脊椎動物の出現、いやそれ以前の真核生物が始まったころにまでさかのぼる可能性があります。この非常に古くからある両システムは、いろんな段階で、共に進化してきたのではないでしょうか。今後の進化生物学的なアプローチによる両者の相互作用の研究も注目されます。」(岡村均)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:岡村 均

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