ピロール・イミダゾールポリアミドを用いたテロメアクロマチンの成分分析

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2021-10-11 国立遺伝学研究所

国立遺伝学研究所の井手聖 助教、佐々木飛鳥 元総研大大学院生、前島一博 教授のグループは、京都大学・理学研究科の河本佑介 元大学院生、板東俊和 准教授、杉山弘 教授のグループと共同で、染色体末端テロメア配列のクロマチンの構成成分を抽出し、分析する方法 (PI-PRICh)を開発しました。染色体テロメアは細胞老化・がん化に重要な役割を担うことが知られています。

ゲノム上のDNA制御配列(染色体末端であるテロメア等)は、細胞の増殖、分化、発生、老化などの過程で、さまざまな機能を遂行します。この働きを理解するためには、DNA制御配列にどのような因子が結合し、機能的なクロマチンを形成するのかを知ることが不可欠です。このDNA制御配列を含んだクロマチンを単離精製し、その構成成分を分析する方法は、結合因子を包括的に同定できる有効なアプローチで、これまで様々な手法が開発されてきました。しかしながらこれまでタンパク質成分の分析はおこなわれてきましたが、クロマチンに結合するRNAの成分分析は困難でした。タンパク質をコードしない機能性RNAはクロマチンの機能に重要な働きが示唆される一方、精製過程で不純物(主にリボソームRNAやメッセンジャーRNA等)が混入しやすいことが問題でした。

本研究ではこの問題点を克服するため、「ピロール・イミダゾール(PI)ポリアミド化合物」(図1A)を用いたクロマチン単離法 (PI-PRICh)を開発しました。PIポリアミドは、マイナーグルーブバインダーと呼ばれ、二本鎖DNAの副溝を通して塩基配列を認識し、特異的に結合します。そのため、PIポリアミドは不純物の要因となる一本鎖RNAに結合せず、標的の二本鎖DNAのみに結合し、クロマチンを高純度に精製できます。研究グループがPIポリアミドを用いて、マウスとヒトのテロメアクロマチンを精製し、構成成分を分析したところ、テロメア結合タンパク質シェルタリン複合体などの結合タンパク質群に加えて、テロメアを伸長させる酵素のRNA構成要素を含めた多くの機能性RNAの同定に成功しました(図1B)。

本研究の成果により、テロメアのクロマチン構成因子の変化を詳細に捉えることが可能となり、老化やがん化におけるテロメアのさらなる役割が明らかになると期待されます。また、PIポリアミド化合物を用いれば、テロメアのみならず、他のDNA制御配列のクロマチン構成因子を網羅的に同定できることが期待されます。

本研究を遂行するにあたり、NIG-JOINT(2015-B6)、日本学術振興会 (JSPS) 及び文部科学省科研費 (JP17J10836, 15H01361, 21H02535, 20H05936, 21H02453)、JSPS特別研究員(DC2)、武田科学振興財団、上原記念生命科学財団の支援を受けました。

図1:(A) クロマチン精製用のピロール・イミダゾール(PI)ポリアミド化合物。PIポリアミド化合物は二重鎖の副溝を通してDNAに結合する。精製用タグがリンカーを介してテロメア結合PIポリアミドに付加されている。(B) PIポリアミドを精製用プローブとして用いたテロメアクロマチン単離法 (PI-PRICh)の概要図。細胞を架橋固定し、クロマチンを可溶化する。PIポリアミドプローブを加えて標的配列に結合させることで、標的クロマチンを単離濃縮する。その後、結合タンパク質とRNA(主としてノンコーディングRNA)をそれぞれ質量分析計と次世代シークエンサーで解析する。

Telomere-specific chromatin capture using a pyrrole–imidazole polyamide probe for the identification of proteins and non-coding RNAs

Satoru Ide#*, Asuka Sasaki#, Yusuke Kawamoto, Toshikazu Bando, Hiroshi Sugiyama, Kazuhiro Maeshima
#共同第一著者 *責任著者

Epigenetics & Chromatin (2021) 14, 46 DOI:10.1186/s13072-021-00421-8

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