魚類ヒレの進化的起源に関する150年来の定説を覆す~新規仮説:ヒレは削り出しで作られるのではない!~

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2022-05-18 国立遺伝学研究所

魚類の正中ヒレ(背ビレ・尻ビレ・尾ビレ)は、遊泳などにおいて重要な器官です。正中ヒレの発生・進化の過程については、150年前に提唱された、膜ヒレからの「削り出し」で形成されるという仮説が信じられてきました。東北大学大学院生命科学研究科の宮本知英氏(博士課程前期学生)・阿部玄武助教(現・鳥取大准教授)らのグループは、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の川上浩一教授と共同研究を行い、熱帯魚ゼブラフィッシュを用いて背ビレの発生過程を分子・細胞レベルで解析しました。この結果から、背ビレは発生初期に作り出される一続きの膜ヒレとは独立した「背ビレを作る細胞の出現と増殖」によって形成されることを明らかにしました。これは、背ビレは祖先の持つ一続きのヒレから「削り出された」のではなく、「膜ヒレとは独立な細胞が出現・増殖する発生メカニズム」の新たな出現によって正中ヒレが獲得されたことを示唆するもので、ヒレの進化的起源の新たな仮説を提案する重要な報告になります。本研究結果は、5月7日付でScientific Reports誌に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金および笹川科学研究助成の支援を受けて行われました。

遺伝研の貢献: 国立遺伝学研究所では、独自に開発したトランスポゾンを用いた遺伝子トラップ技術により、発生段階において、さまざまな組織・細胞・器官を可視化できるトランスジェニックゼブラフィッシュを2000系統以上作製してきました。それらを元に、国内外の発生生物学・神経科学研究者と共同研究を展開しています。

Figure1

図: 正中ヒレの発生過程と獲得過程の新たな仮説
正中ヒレが作られる領域で間葉系細胞が出現・増殖することで正中ヒレが形成(青矢印)
全身の成長に伴い膜ヒレが退縮(オレンジ矢印)
青矢印で示した発生メカニズムが進化の中で生じたことで、正中ヒレが獲得された。

Developmental Independence of Median Fins From the larval Fin Fold Revises Their Evolutionary Origin

Kazuhide Miyamoto, Koichi Kawakami, Koji Tamura, Gembu Abe*
*責任著者

Scientific Reports (2022) 12, 7521 DOI:10.1038/s41598-022-11180-1

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生物化学工学
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